住吉川生き物案内 ガイド

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白鶴美術館前ポイントの特徴

白鶴美術館前ポイント解説 灘校生物研究部

左上に見えるのが白鶴美術館
折り返し地点よりもさらに上流で、火災時に消防車が入るためのスラロームが見える。

白鶴美術館前と便宜上読んでいますが、じつは結構距離があります。灘校生にとっては、清流の道の折り返し地点(ランニングでよく走るコースなのです)という方がなじみ深いのですが、語呂が悪いのでこう呼ばれています。

さて渦森台、地獄谷、五助堰堤、は住吉川の上流部に位置していましたが、この白鶴美術館前から水道橋下そして新反高橋までの3地点が中流部となります。これまでの上流部が山間部を流れていたのに対して、中流部は東灘の都市部を貫く形で海に流れ込むのです。

さて白鶴美術館前に話を戻しますと、この地点の一番の特徴といえばその広さです。両岸の間が50メートルを超える部分もある、住吉川でもっとも川幅がある部分といっても良いでしょう。といいましてもつねに水が充ち満ちているというわけではなく、増水時でもなければ半分も満たないことがほとんどです。それでも下流部などに比べれば倍以上はあるのですが。

このあたりは山間部と平野部の境に位置するため、多くの土砂が流れ込みます。それらは川の中で浮島を作り、少しずつ川下に流されていきます。そうしてできた島々に植物が芽吹いた姿が、住吉川中流部で多く見られる中州でありブッシュなのです。

このあたりは山間部と平野部の境に位置するため、多くの土砂が流れ込みます。それらは川底に少しずつ堆積し、やがて水面よりも積み上がったものは中州となるのです。上流から流されてくるのは土だけはありません。たくさんの草木やその種も流されてきます。美術館前の中州には人の背丈ほどの草本が茂り、なんとそれ以上の樹木すら生えています。そしてそれらの浮島は少しずつ水流によって削られ、やがては小さく分断されて流されていきます。それが住吉川の中流部で多く見られる小さな中州でありブッシュなのです。


白鶴美術館前ポイントの自然

都市部に入っても住吉川の水質はきわめて良好で、生物層は上流部とほとんど変わりません。しかし、流域が広がった分様々な植生やニッチが生まれ、棲み分けは進んでいきます。これは生物の多様性を保つ上で非常に大切な要素で、例えばですがマダラカゲロウ類やナガレトビケラ類といった小型の捕食者は、都市部に入ってから生息域を急激に広げていきます。なぜ環境が良いはずの上流部で彼らが生きられないのかというと、狭い山間部の水域では身体の小さな彼らを食べるもっと強力な捕食者と出会いやすく自分が食べられてしまうからです。ところが中流域となり川の幅が広がると逃げ場が増えて生き残りやすくなるのです。

また、もう一つ川の多様性を維持する要素としてたくさんの分解物が流れ込んでいるという点も大切です。分解物とは一度生き物が食べた残りや排泄物のことで、まっさらなものを食べるよりも誰かがかみ砕いてくれたものを食べる方が消化に良いと考えれば分かりやすいと思います。

加えて、山間部を別々に流れていた様々な支流が合わさることにより、集まる分解物の種類が増えるというのも大切なポイントです。というのも生物は皆好みの食べ物があります。しかも人間の好き嫌いとは異なり、それしか食べられないという種がほとんどです。例えばですがユーカリの林にはコアラは住めてもパンダは住めません、逆にササの林にはパンダは住めてもコアラは住めないでしょう。特定の環境しかないのでその環境に適応した生物しか住めない、これが上流部のイメージです。対してユーカリとササの両方が茂る林であればパンダもコアラも住むことができます。これまでに紹介してきた上流部は流れる支流によって落ち葉が多い、砂礫が多い、湖がある、など様々な特徴を持っており、それぞれに適応した生物が暮らしていました。そしてそれらが合流し、すべての特徴を引き継いだ中流部では、そのすべての生物が生きることができます。上から流されてきたユーカリと笹の両方の葉が得られるならコアラもパンダも住めるのです。

住吉川の清掃ボランティア 住吉川クリーン作戦 白鶴美術館前ポイント解説 灘校生物研究部

↑住吉川の清掃ボランティア
クリーン作戦と呼ばれて、春と秋に2度行われています。

五助堰堤の魚類 白鶴美術館前ポイント解説 灘校生物研究部

↑変形するブッシュ
中州はこのように分離して、小さくなって下流に流されていく

もちろんこれらの話は、中流部になっても水質が綺麗であるから成り立つ話です。好き嫌い以前に、水が汚ければ生き物は生きれません。普段は汚れの少ない上流部で暮らしている種類であればなおさら汚染には敏感で、すぐに弱ってしまいます。住吉川は皆の努力により水質を保っているので、水の汚れがボトルネックとならず、上流から流されてきた多くの生き物たちが暮らすことができるのです。

※住吉川清流の会とボランティアの皆さんが定期的に清掃を行っています。もちろん生研も参加です。ゴミ袋や軍手など道具は貸し出してくれるので手ぶらでOK。あ、掃除してるなって見かけたら、是非ご参加を!ちなみにゴミを集めた後いくつか設置される回収ポイントまでもっていくとジュースと交換してもらえます。

※パンダは本当は雑食らしいです。ササだけじなくて結構肉も食べるとのこと。中国の保護センターでササの葉を手渡せるそうなんですが、近くで見ると可愛らしさよりも、牙や眼光の鋭さや吐息の生臭さの方が気になるとか。
ちなみにパンダを何も見ずに描け!というのは定番の生物クイズだったり。みなさん、どこが黒でどこが白かちゃんと思い出せますか?

ゲンゴロウ幼虫 白鶴美術館前ポイント解説 灘校生物研究部

↑ゲンゴロウ幼虫
小さいながら強力なアゴを持つ捕食者。ただし羽化には土が必要。

道中の砂防ダム 白鶴美術館前ポイント解説 灘校生物研究部

↑ヘビトンボ幼虫
こちらも強力なアゴと、なかなかの遊泳力を持つ。なんと魚も食べてしまう!

美術館前には上流部から流されてきた様々な生き物が見られますので、この場所でしか住めない生物とその生活を最後に紹介していきたいと思います。

このポイントは上流部すべての性質を持つと説明しましたが、この地点にしかない特徴もあります。それが、土のある岸です。住吉川は山間部は花崗岩質の岩場、都市部はコンクリートで再建された人工の川底を流れます。つまり、上流も下流も岸が硬いのです。

少し話は変わりますが、皆さんホタルが卵を産むには土の岸が必要だという話を聞いたことがありませんか?それはホタルの成虫は水中ではなく陸に上がって土の中に卵を産むからなんです。これまでに紹介してきたカゲロウ、トビケラ、カワゲラなどの生き物はみな水中に卵を産んで水中で生まれる、つまり両岸が岩でもコンクリートでもあまり問題になりません。ですが、ホタルなど一部の生物は柔らかい土の陸がなければ卵が生めない、つまり繁殖できないんです。長くなりましたが、そういった繁殖に陸が必要な生物は、柔らかな土の岸を持つこの美術館前が絶好の産卵ポイントになっているわけです。

住吉川に生息する土の崖が必要な生物としては、ヘビトンボ類とゲンゴロウ類があげられます。これらは幼虫時代はずっと水中で過ごすのですが、成虫になる前に蛹になるときは土の中でなければいけないのです。終齢のヘビトンボ幼虫は5pを超え中学生の手のひらよりも大きく大迫力なため、発見すると部員も盛り上がります。


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