さて突然ですが、あなたが『クラブ活動』に対して持っているイメージとはどんなものでしょうか?
部活をしていて定期試験や受験は大丈夫?
運動部と掛け持ちしたいけれど平気?
そもそも文化部ってどんなことをしているのか分からない……
新入生の皆さんも、保護者の皆様方も、疑問や不安はつきないと思います。
それも当然です。中学生や高校生にとって、部活は学生生活の多くを占めることになります。ましてや 中高一貫校の灘の場合、最長だと6年もの時間を過ごすことになるのですから。
灘中生になって、やりたいことが決まっている人も、まだまだよく分らない人も、
是非 我らが生物研究部を一度覗いてみませんか?
灘校生物研究部こと通称『生研』は、90年以上の歴史を持つ由緒正しきクラブです。
といっても規則が厳しいなど 息苦しいところはまったくありません。
生徒の自主性を重んじる灘校らしく、活動内容はそれぞれの部員に任されています。
部室で研究に打ち込むもよし、川や海に出てタモ網を握ってもよし。本を読んだり、生き物を飼ったりして、知識を深めてもいいでしょう。
つまり、何でも自分の好きなことをしていいのです。
そして、それが生研なのです。
このページでは、そんな生研の日常や活動を紹介していきたいと思います。
――灘校生物研究部(2018年度)――
部員数:30人(中学生:10人 高校生:20人)
活動時間:月〜金、放課後(自由参加)
〃 場所:生物研究部部室(西館3階)
〃 内容:ミーティング(1回/週)
勉強会(1回/週)
住吉川の定期観測(1回/月)
六甲山の調査(1回/季節)
外部合宿(2回/年)
部活動への出席は基本的に自由です。
部室前の掲示板に予定が張り出されますので、好きな活動に参加できます。
詳細は『こちら』をご確認ください。
↑ 2018年の文化祭を終えて。部員とOBと。
2018年05月03日 生物教室にて撮影
『自分の興味に素直であることと、好奇心を大切にすること』をモットーとする部員達ですが、普段はどのような部活ライフを送っているのでしょうか?ここではその一部を見ていきましょう。
生研の日常は大きく分けて『個人・団体研究』、『河川調査』、『勉強会』、『部会』の4つに分けられます。それぞれを少しずつ紹介します。
↑ プレゼンの練習をする部員達。
2006年04月 旧生物教室にて撮影
個人/団体研究は生研の主な活動の一つです。自分が疑問に思う事柄を実験で探り、ある程度結果がつかめてきた所でレポート等を提出してもらいます。
顧問に申請すれば、さまざまな実験器具や薬品等を借りることができますし、無ければ取り寄せてもらうこともできます。生物研究と看板を上げておきながら言うまでもないことですが、部室で水槽などを使って色々な生き物を飼うのももちろんOKです。
最初の目標としては勉強会や部会でのプレゼンテーションを、次の目標としては 後述する文化祭でのポスター展示を、最後の目標としては 科学コンクールや市民学会での発表を、それぞれ目指している部員が多いですね。
最初からテーマを持っていればイキなり挑戦してもいいですし、先輩の手伝いをしながらテクニックを磨くのもいいでしょう。
自分の興味と好奇心を重視するのが生研流。思うがままにチャレンジしてみてください!
具体的にどのような研究があるのだろう?と気になった貴方は、こちらの『過去の個人/団体研究』へのリンクをご覧ください。
↑ 川にすむ魚を観察する部員達。
2007年03月 住吉川にて撮影
生研は研究室の中だけで活動しているわけではありません。 部屋を飛び出した部員達は学校のすぐ側を流れる住吉川の河川調査も行っています。
代々の生研部員が継続して行なっている特別な共同研究で、2014年でとうとう10年になります。
といっても河川調査がどんな活動なのか、よく分りませんよね? 詳細は別ページに譲りますが、川に住む魚や水生昆虫そして植物などを一年を通して観測したり、様々な観測器具を用いて川の水質を測定したり、様々です。
他にも周囲の川を利用している皆さんへのアンケート調査や地域でのボランティア活動などを通して、生物学だけでなく様々な視点から身近な川と文化を見つめていこうと挑戦しています。
河川調査についてもっと詳しく知りたくなった貴方は、こちらの『住吉川の河川調査』へのリンクをご覧ください。右上の『詳細版』アイコンをクリックいただけると、さらに詳しい解説ページを確認できます。
↑ 校内合宿の一シーン。水生昆虫について学ぶ。
2007年03月 研修館にて撮影
生研が部を挙げて行なっている活動の一つに、新入部員や中学生向けの勉強会があります。
名前の通り、部員達が様々な知識を教え合う場で、ミーティングで相談したテーマを各自勉強して次回以降の勉強会で発表と質疑応答を行なっています。
テーマは、「文化祭で演示している実験の練習」「生物オリンピック予選への対策」「ニュースで話題になった最新研究の理解 」などだけでなく、「プレゼンテーションの方法論」「ディベートのテクニック」など一見部活に関係なさそうなジャンルからも選ばれ、生物や科学に関するものに限らず広く学んでいきたいと考えています。
プレゼン資料をまとめたり想定問答を準備したりと 大変ですが、各々1人で本を読むより知識も身にも付きますし、なかなかやり甲斐があるんですよ。生物オリンピックで複数のメダルを頂くなど結果もでてくると嬉しいものです。
↑ 内部合宿を計画するミーティング。
2006年07月 旧生物教室にて撮影
部会というと大袈裟に聞こえますが、ただのミーティングです。だいたい週に一度行なわれています。
学校生活の6年間は長いようで短い。楽しい時間を有意義に使うため、毎週集まって頭を悩ませています。
個人実験の進展具合を報告し合ったり、機材の使用日程をすり合わせたり、勉強会のテーマを決めたりと、やることは沢山です。
いつもはバラバラに活動している部員達が一同に会すると部室では手狭になってしまうので、顧問の許可をもらって生物教室をお借りすることが多いです。
最近では同じ場所に集まらなくてもスマホを使って簡単に会議はできるし議事録なども作れるんですが、たまには顔を合わせるのも大事だろうと新校舎になってもやはり生物室に集まっています。
中高生の部活では、レギュラー枠の獲得や 大会の順位など、成果が分りやすい運動部がどうしても目立ちます。
しかし、文化部だって負けてはいません。運動部に試合や大会があるように、文化部である生研にも 文化祭や校外合宿をはじめとする数々の見せ場があるのですから。
これまでに紹介してきたのを生研の"日常"とすれば、この章でご紹介するのはまさに"晴れ舞台"と言えるでしょう。
ですが大舞台というのは、もちろん特別なイベントだけを頑張って 普段を蔑ろにしていいということではありませんよ?
祭は準備する時間こそ楽しいもの。本番だけしか楽しめないなんて、もったいないじゃないですか!
↑ お客様の質問に応じる部員。
2013年05月 生物教室にて撮影
灘校に興味を持っている貴方なら、きっとこれまでに一度は来たことがあるはず。灘校名物文化祭。我が校の文化祭はクラスごとでなく、各クラブが出し物を出す、ちょっと変わった形式の文化祭です。
生研では一年の研究成果をここでパネル等を用いて発表しています。他にも一日中ぶっ続けで科学実験を行なう『ライブ実験』、河川調査の成果を公開する『ふれあい川展示』など、見所が盛りだくさんです。
当たり前の話ですが、祭というのはただ参加するよりも運営する方がずっと大変なものです。他のクラブがそうであるように、生研も文化祭直前の数週間は倒れそうになるほど忙しくなります。水槽等の展示が多い生研では後片付けもなかなか骨の折れる仕事だったり。しかし、終わった後の充実感は何者にも代えがたいものがあります。
以下のリンクから、これまでの文化祭についての特集記事をお読みいただけます。ご参考ください。
『2017年 第71回 灘校文化祭特集』
『2016年 第70回 灘校文化祭特集』
2015年度以前の文化祭特集は『生研アーカイブ』へ
↑ 夏期合宿で特別に施設を見学させてもらう
2009年08月 和歌山県 水産センターにて撮影
臨海学校に修学旅行、学校生活を彩る思い出の中心には必ず旅行があります。
実は生研にもそんな「旅行」があるんですよ!
といいましても、思い出作りのためだけに遠出をするわけではありません。
校外という通り、外部の宿泊施設を利用して春期と夏期の2回、それぞれ2〜3日の長期活動を行います。テーマは毎年部会で相談し、OBや顧問の皆様方のお力も借りつつ、行き先を選択するのです。
近年では、
西表島にて野生動物の観察(沖縄県)
桂浜でクジラとイルカを探す(高知県)
有明海にて生態系を学ぶ(長崎県)
屋久島にて植生を学ぶ(鹿児島県)
高田川や海辺で採集旅行(和歌山県)
四万十川にて河川観測(高知県)
佐敷干潟にて生態系を学ぶ(沖縄県)
串本にて磯採集、水産研修に参加(和歌山)
などがあります。
少し話は変わるのですが、生研のOBの活躍は多岐にわたります。研究者や医者だけでなく、弁護士や政治家まで様々。そんな先輩方が働いていらっしゃる最先端の世界を見学をさせてもらえるチャンスが、この合宿なのです。
合宿についての詳細に興味をお持ちになった方は、『2007年 春合宿 沖縄にて』、『2009年夏合宿記 in 和歌山』などの合宿記を一度ご覧になってみてください。
↑ 校内合宿の一シーン。住吉川上流を歩く。
2004年07月 六甲山中にて撮影
われわれ学生の本分はやはり学業であり、生活の中心には授業があります。
早朝、昼休み、放課後、自由になる時間はばらばらで、まとまった活動時間がとれずに思うように研究が進まないことは少なくありません。
そんな部員達のために年に数度行なわれるのが、校内合宿なのです。
こちらも名前の通り、校内の宿泊施設(研修館)を利用して長期間の活動を行ないます。
その期間は5〜7日と非常に長いのですが、校外合宿とは違って、自分の予定に合わせて一時的に帰宅することももちろん可能です。
個人研究の他にも、勉強会や河川観測を集中的に行なう絶好の機会でもあります。
自分の研究に打ち込むもよし、様々な勉強会に参加するもよし、普段は行けないような上流部に足を伸ばすもよし、合宿の過ごし方は十人十色、貴方だけの合宿を楽しんでみませんか?
同じく興味をお持ちになった方は、『2009年夏 校内合宿記 in 六甲山』などの合宿記をご一読ください。
ホームページやメールを通して、他校の生物部や地域のみなさまと交流を行なっています。
関西の生物部の有志で行なっている交流会に参加したり、河川調査の縁で地域の清掃活動に参加したり、イベントにブースを出店したりしています。ホームページを通して、テレビへの出演依頼や、雑誌の取材を受けたこともありました。
地域の皆様に自分たちの活動を知っていただけると大変励みになりますし、部員達の自信につながります。これからも研究室の中だけではなく外での活動に力を入れていきたいと考えています。
↑ 地域の清掃ボランティアに参加中。
2004年11月 住吉川クリーン作戦にて撮影
↑ かわの情報誌”さらさ”72号(2005年7月発刊)に、生研の活動が掲載されました。
↑ 毎日放送の『よゐこ部』の2009年8月4日放送回に、生研として参加させていただきました。
↑ 北九州高等学校を見学、同校 魚部との交流させていただきました。
2013年7月 北九州高等学校 魚部と共に撮影
↑ 2013年度 関西生物部交流会に、生研として参加させていただきました。
2013年8月 ユースプラザKOBE・EAST にて撮影
↑ 2018年3月に コープは〜とらんどハイム本山 で行われた ふれあい春まつり に生研として参加させていただきました。
部室に来て入部希望とひとこと言ってもらえれば、それだけでOKです。
保護者や担任、顧問などの印が必要な、ややこしい入部届けの類は一切 必要ありません。
そして生徒の意思で即入部・退部できるシステムになっているので、水が合わなかった場合は辞めても大丈夫です。
すぐ入部するわけでは無いけれど部活を体験してみたい!という人のための体験入部も受付けておりますので、お気軽にご参加ください!
さてここで、これまで付き合ってくださった皆さまに、少しアドバイスを。
さまざまな部活を見てみたいという気持ちも分りますが、文化部 運動部共に 4月中に決めてしまうのがお薦めです。
なぜなら、文化祭(5月2〜3日)や中間テスト(5月第2週)といった大イベントが、5月の初めには連続しているからです。
中学生活 初めてのイベントや試験に、先輩やOBのアドバイスを受けることができれば、随分と心強いでしょう。
文化祭(5月2〜3日)を見てから決めるのもアリですが、ゴールデンウィークが明ければ試験前の部活自粛期間となり、クラブによっては入部ができないかもしれないので要注意ですよ。
もちろん、我らが生研はいつでもウェルカムです!
(試験前でも部室にいるのは 生き物の世話があるからであって、決して現実逃避では……)
ここまで生研について、様々なことを紹介してきました。
とりあえず色々な活動をしているクラブなのだ、ということは伝わったかと思います。
ですがクラブ活動は充実すればするほど、逆に大変なことも多くなります。
部活は楽しいだけではありません、嫌なことやしんどいことも沢山あるはずです。
しかし。しかしです。
生研に入れば、貴方が最高に灘校生らしい学園ライフが送れることを保障しましょう。
最後にちょっと小難しいことを一つ。
最近新聞やテレビでIPS細胞などバイオ関連のニュースが良く取り上げられるようになりました。
そういった最先端の研究に簡単に触れられる昨今、設備も不十分な部室に義務教育程度の中高生が集まって何ができるのか?ましてや川や野山に繰り出す意味はあるのか?とよく我々も自問自答しています。
例えばそうした『最先端技術』と『生き物の飼育』や『河川観測』は一見かけ離れているように見えるかもしれません。ですが『いのちを見つめる』という点で僕たちと同じ目線だともいえます。
教科書や図説から知識を得るのはもちろん素晴らしいことです。しかし、それらの知識を用いて何をするのか?何を考えるのか?といった自分なりの意見や姿勢というものは、果たして授業をただ受けるだけで育つものでしょうか。
生物研究部の部員として過ごす六年間には、きっとそうした大事なことを考える機会と、共に学ぶ得難い仲間との出会いがあるものと思います。
とにかく大事なのは、一にも二にも探究心。
さあ、僕達と共にすばらしき生物の世界に最初の一歩をふみだしてみませんか?
生研部員一同 2018年4月