コラム
 やはり生研だけあって生物ネタ中心? 「研究」だけではわからない
部員たちの一面もご覧下さい。


Nの通信衛星

2009年夏合宿記 in 和歌山(64回平出、65回岡田) 一日目 二日目 三日目 四日目

 長期休暇中にはほぼ毎回行っている合宿。 ですが、やはり一番盛り上がるのは夏休みの合宿です。
生き物たちが最も活発に動き回る季節でもあり、又、夏休みという長い休暇のおかげで少しばかり遠い所まで足を運べるからです。 さて、2009年の夏休みには我々生研部員は海、山、川と三拍子揃った和歌山県を訪れ、串本、そして高田川を中心に生物について研究しました。 では、部員達の活動っぷりをご覧あれ。

一日目

朝、集合は大阪駅の某鐘。がんばって早起きしたのに筆者が最後に着いたらしい、不思議です。
そこから新大阪駅まで歩いていき、オーシャンアロー5号に乗車。さすが灘校生だけあり、電車の中ではこれから向かう場所の予習や学校から出ている宿題などを黙々とこなしています。元気盛りの学生が電車に乗っても普通こうはならないでしょう。(これが、大人になるという事。ひとつ学びました。)
電車に揺られること約3時間、12時頃に串本駅に到着。顧問の宮田先生も、電車内での部員の態度に非常に関心をもったようで、降車してから少しお話いただきました。駅を出た所に待っていてくれたマイクロバスに乗り込み、夜泊まるホテルに大きな荷物を置いてから、水産試験場という施設を訪れました。バスから海がみえると部員のテンションがマッハになり、奇声を発するのはもちろん、我らが部長に到っては既に半裸になっていました。
水産試験場というのは、和歌山県の海に関する様々な研究をしている施設です。そんな素晴らしい所を見学させてもらえるなんて感激です。試験場では、まず施設の仕事や活動内容について詳しく説明していただきました。ふむふむ、なるほど、と部員たちも興味津々のご様子。
簡単にまとめると、次のような事でした。 若年層の母親の魚離れによる近年の水産資源の生産額減少。我が家では魚は週に何回か食卓に並ぶので分かりませんが、確かに魚を食べない家庭もありそうです。水産試験場では、その対策として魚の消費拡大に向けて活動しているそうです。"水産試験場"と聞くと、愛護団体のように「魚かわいそうだから食うな!」と言うものだと思ってたので意外でした。また非常に興味深かった話に、和歌山県の漁獲量は全国26位(低い)というものがありました。その理由として和歌山沿岸を流れるのは黒潮ですが、この黒潮がきれいな海なので逆に生物層に乏しいとのことです。きれいな事がダメなんて、皮肉なものですね。
さて一通り説明を受けた後は、施設内を案内していただきました。やはりかなり本格的な施設なので、様々なごつい機械などたくさんありました。時折すれ違った職員さん達は皆、充実した素晴らしい顔をしていました。一方、部長はまだ半裸でした。
案内の後はついに実践!ということで実際に獲ってきた魚十数匹を、グループに分かれて同定、分類しました。先輩だからかっこいいとこ見せてやるぜ!
「あ、それ知ってる!うなぎですね!」「えー…これはダツですね」
「そ、それは!サンマですね!」「アジです」
「ままままぐろ!」「アジです」   「・・本当ですか?」「マジです」
今回は諦めようと思いました。でも、食卓に並ぶようなものから見たことのないような形のものまで、色んな魚を触ったりできたのは非常に楽しかったです。どんな種類の魚でも、必ず見分けるポイントがあるということも教えていただきました。
魚のあてっこをした後、次はこの魚達を解剖することになりました。魚の頭部には耳石という小さな骨があるそうで、今回はそれを取り出してみようとのこと。…あれ、この魚耳石ないじゃーん。次いってみよう。……あれ、やっぱないわ。次。………ふむふむ、なるほど。こんな繊細な作業を体型からしてルーズな私がやるべきではなかったという事だな。仕方ない、他の部員の応援に回ろう、としたところ、なんとマグロ(すごくおおきい)の頭から耳石を取り出すらしい。執刀医には部長が立候補。マグロの頭にナイフをあてがうその姿は、さながら板前のようでした。やっぱり生研の部長ともなると、マグロの解体もできるんだなぁと痛感しました。
結局耳石が取れたかどうかは覚えていませんが、きっと凄い戦いだったのでしょう。これ以来、部長には「じせきん」というあだ名が定着したのですが、またこれは別の話。ね、じせきん♪
日も暮れかかった頃水産試験場を後にし、青少年の家という名のホテルに戻りました。夕食やら風呂やらミーティングやら済ませた後、就寝。このミーティングのあみだくじで、卑劣な不正が行われたのを私は見逃しませんでした。しかし、私以外は皆グルだったようで抵抗は通じず、結局こうして私が合宿記を書くことになりました。




二日目

 「おはよう!一日は元気なあいさつから始まります!」という部長の声で起床。「いただきます!食事は元(略)」という声を無視しつつ朝食をとってから、今日も水産試験場に行きます。
着いてから前日と同じ部屋へ行き、また別の話をしていただきました。この試験場には、漁場予報というのが出来る機械があるそうです。仮想海流を用いた予測と、水産試験場の生物データを組み合わせて、「ここで魚とったらいいよ!」という情報を漁師さん達に伝えているそうです。
このシュミレーションデータと衛星によるデータを比較して予報の精度を増したりもするらしいです。すこし難しい話でしたが非常におもしろい内容でした。
 さらに別の方からは、海草についてのお話をうかがいました。昨日、魚でやった分類や同定を、今日は海草でするそうです。海草か。あぁ、酢こんぶと都こんぶの違いすら分からない私には難しいかもしれない。 ところが、実際海草を触ってみると凄く楽しかったのです。ぬるぬるした感触が私の脳髄を刺激し、脳細胞が一つの答えを導き出しました。・・・(…ワカメは噛め。)しかし私はこれをそっと胸にしまい、分類作業に加わりました。
結局、海草の同定は非常に難しいということが分かりました。素人の私なんかだと、図鑑の写真と比べる際に、色やシルエットなどで判断していたのですが、実際は色なんかは場所や環境で変わることもあるらしく、もっと細かいところに焦点を当てないといけないそうです。
二日間もお世話になった水産試験場ですが、これでお別れです。本当に、親切にしていてだきありがとうございました。
 試験場を昼頃に去り、次に向かうは海中公園です。海です。まず最初に海中公園の職員の方と一緒に、海岸の散策をしました。各々、網をもって潮溜まりで魚などを獲りました。泳げない私は、怖いのでずっと浅い所でナマコと乳繰り合っていました。
海岸の散策をした後、昼食をとり、海中公園の見学をしました。まずは一般客にも公開されている展示スペース。変わった海の生き物や、部長の不気味なダンスが見られました。そして、なんと今回は特別にバックヤードまで見学させて頂きました。水族館を裏から見るってすごい!手入れや掃除の仕方など、色々教えてもらいました。
そして、この海中公園で有名なのが、ウミガメ!外の水槽には大人のウミガメが何十匹も泳いでるのが見られます。この度、私たちはなんと、ウミガメの子供(30cmくらい)を抱く権利を得たのです。か、かわいい。こんなにかわいい子が、抱けてるんだから、ちょっと、つめで、ひっかかれた、くらいじゃ、はなさないんだからァー!すっごく暴れるので割りと痛みを伴います。
バックヤードを出、次に実際の海中が見られる所に降りていきました。魚の悠々自適な泳ぎっぷりを目にすることが出来ます。「おい、あれ部長じゃね?」「部長!なに泳いでるんっすか!」「戻ってきてくださーい!みんな待ってますよ!!」
海中が見られる所のちょうど上で、海面に向かって魚のエサを投げられるようになってます。少しここで遊んでから、またホテルに戻りました。海中公園のみなさん、ありがとうございました。
 ホテルに帰ってからはだいたい昨日と同じように、食事やミーティングをしました。と、私の執筆はここまで。後半は、岡田に任せました。




三日目

 この日は朝から生憎の雨…。よって朝に予定していた釣りは中止……。ひそかに一番楽しみだったのに!
 ということで、とりあえずバスで釣りを予定していた釣り堀に行き、部長と顧問のみ下車。中止になったこととお礼を伝え、我々は太地町のクジラの博物館へとむかった。  入場の際にピンバッジを頂いたので、みんなでつけた。みんな割と気に入っていたようで、評判はよかった。
 クジラの博物館では、体の各部位ごとにわけてある様々なクジラの標本や、クジラの模型等があった。捕鯨に関する展示もあり、部員たちは口をそろえて「思ったより面白かった」と言っていた。またふれあいコーナーのようなものがあり、魚等に触れるようになっていた。数名が魚を触ろうと躍起になっていたようだが(僕もです…)、まあみんな(?)触れていたのでよしとしよう。実は僕が触れなかったことは秘密ですよ…。
また、この施設内ではたくさんのイルカや小型のクジラなどが飼育されていた。なかでも、「腹びれのあるイルカ」に興味をひかれた。腹びれとは、大昔にクジラの先祖が陸上生活をしていたときの後ろ脚のなごりが遺伝子の突然変異で現れたものだそうで、「先祖返り」というらしい。
「先祖返り」の個体が見つかるのは世界的にも非常に珍しいことだそうで、希少なものを見させてもらった。
クジラの博物館では、なんとシャチショーを行っていたので全員で鑑賞した。私自信シャチを生で見るのは初めてで、その迫力に押されつつも、感動した。みんながシャチに目を奪われていたその時、なんと隣のイルカ専用プールにいたイルカがジャンプ!きっと調教師さんのマイクでの実況に反応したのでしょうが、それにしてもイルカって賢いんですね。ちゃんと何を言われたらジャンプすればいいかを暗記してるんですから。
そんなこんなで一行はクジラの博物館を後にし、那智の滝へ…。え、なんで生物研究部なのに那智の滝なんかに行くのかって?それには深い理由が……あるはずも無く、ただ雨で活動ができなかったからである。
 那智の滝では……まあ予想通り、滝を見ただけです。でもやっぱり今まで見たような他の滝とは規模も迫力も一線を画していて、素晴らしいものだった。それとおみくじを中三の四人がやった。すると……13番が三回もでた。「四分の三だよ?これって奇跡じゃね?」……ごめんなさい。ただちゃんと振って無かっただけです。
 那智の滝に長時間いるのもあれなので、那智大社へ。「お前らはほんとに生研か?」という質問はやめてくださいね。地歴研究部みたいだなというのは部員のなかでも何度も話題に上がりましたから。
そして那智大社で事件発生!なんと、行きと帰りで階段の数が違―う!びっくり!!…ごめんなさい。僕はこういうノリなんですよ。とまあしょうもない話は置いといて、しっかりお祈りしてきました。ちなみに僕は50円を奮発!別に不幸だからとかそんなのではなくて、ただその時5円玉と10円玉を持ってなかっただけです。神様、ごめんなさい。
そろそろお腹も空いてきたので昼食。次なる目的地である浮島の森の駐車場でバスの中で食べることになった。数名だけ浮島の森の入口にあるベンチで食べていいと言われたので、バスが嫌いな僕は迷わず降りた。すると、浮島の森の職員の方が浮島の森の歴史や植物について話をしてくださった。なんでもこの浮島の森は戦前からあったそうで、天然記念物にもしていされているそうだ。あ、もちろん昼食のめはりずしはおいしかったです。
昼食後は先ほども書きましたが、浮島の森へ。ここでこの日から二日間お世話になる瀧野先生と合流。浮島の森を説明してもらいながら歩いた。この浮島、計算上は江戸時代から形成が始まっていたらしく、すごく歴史のある場所である。隣の川から水をひいているのだが、塩分濃度が一定以上になると、水が入らなくなる装置のようなものがついていて、浮島内の塩分濃度を調節している。そういった仕掛けもすごいのだが、もっとすごいのは形成されている植物群落だろう。寒地の植物であるヤマドリゼンマイ等と、暖地の植物であるテツホシダがどちらも見られ、さらに天然のスギまであった。こういった植物群落が未だ維持されているのも自然を守ろうとする人々の努力があってこそなのだろう。つくづく人の手を加えなくても、自然が維持される環境に戻ってほしいと思う。
ちなみに、中三のA氏が浮島の森で青と赤のクモを見たらしい。あれだけの植物があれば、クモの一匹ぐらいいてもおかしく無いのだが、それにしても……色が怪しすぎる!!しかもそのクモを見たのはA氏だけのようだ。ただA氏が毒グモにつきまとわれているだけではなかろうか。
浮島を歩いている間に雨が止んできたので、最初の計画を強行して高田川にいくことに。
一度宿泊先である高田グリーンランドに荷物を置いて、高田川へ…。
高田川では、今まで使ったことが無かった「エビタモ」という道具を使って魚等を捕獲した。最初はエビタモの使い方にとまどっていたが、瀧野先生のやり方を見ているうちにコツをつかみ、普通のタモ網より取りやすいことがわかり、ヨシノボリを乱獲し始めた。たくさんとれてテンションが上がって来たので、体操服のまま川にDIVE!!もうすでにDIVEしている人も何人かいたので、気軽な気持ちでDIVEしたのですが……「さ、寒い!!」少し雨で水温が下がっていたのでしょうか。水がすごく冷たいそして寒い!!……さて、僕の苦しみを散々強調したところで、魚について。気づくとバットのすよ?環境省レッドリストの絶滅危惧U種ですよ!実物を見たのは初めてです!珍しいですよね?たぶん……いや絶対!
 さて、こんな感じで楽しく魚をとってたわけですが、ここで悲劇が……。
ふと川の深いところを見ると、高一のK氏とK笠氏が二人で泳いで遊んでいるようだ。あまり泳げない僕にとってはうらやましい限りである。ん?何か様子がおかしい。あれ?あの二人、溺れてないですか?「Kさ〜ん!K笠さ〜ん!」(筆者の心の叫び)やっぱり溺れてそうである。「Kさ〜ん!!!K笠さ〜ん!!!」(またしても心の叫び)。なんとそこで我らが顧問、宮田先生が部長に「おい、行けるか?」と聞き、「はい。」と言って、あきらかに泳ぐ態勢に入る部長(水泳部と掛け持ち)。なんか予想以上にヤバくないですか?
結局、K氏とK笠氏は、部長と顧問の出動無くして、無事に岸に流れついた。結局被害は網ひとつ。人命に比べれば安いものである。K笠氏のメガネも浅瀬で見つかった。つくづく運のいい人である。聞いた話では、K笠氏がK氏を巻き込んだようである。とりあえず無事でよかったが、その後、K笠氏は散々いじられることとなった。
最後にこの日とった魚の確認を行い、貴重な物のみ固定し、残りはリリース。ここでとれたのは、アカザ、ルリヨシノボリ等。
 そして、DIVEして風邪をひきかけている人が多発したので、とりあえず風呂へ。まさかの露天風呂付の温泉にテンションは上がっていく。風呂を上がると売店があり、僕は風呂上がりにコーヒー牛乳。って昭和の銭湯か!……失礼しました。
その後は食事。まさかのすき焼きにまたテンション↑↑!とてもおいしかったです!
そしてミーティングは、総括的なもの。一人一人意見を述べた後、部長の総括と明日の予定確認で終了。
その後は自由時間。僕はとりあえずお土産を購入後、トランプ等で遊ぶ。中学生を合わせると8人になるので結構楽しい。マフィアや大富豪、UNOで遊び、3時頃に就寝。のはずだったが、僕はそれからA氏と話し込んでしまい、結局5時半頃に就寝。ちなみにA氏は朝風呂に入ってから寝たらしい。…す、すごい。




四日目

ついに合宿も最終日。この日は朝から近畿大学の水産試験場へ。
 近畿大学の水産試験場では、アユ、アマゴ、チョウザメの養殖等について説明して頂きました。この話を聞いて、アユの繁殖を生研内で行おうとしていたのですが、200匹ほど必要らしく、すぐにあきらめました。その後、実際に飼っているところをみせて頂きました。住吉川では割と珍しいアユもたくさんいて、感動しました。しかし、何より貴重な体験は、チョウザメにえさやりをさせていただいたことだと思います。チョウザメは地面を這うようにして、地面におちた餌を食べるので、食べているところは見えませんでしたが、満足でした。
 その後、昨日とは違うポイントで魚を採集。ここで獲れたのは、アユカケ、カワヨシノボリ、ヌマチチブ等。
 これで前日からお世話になっていた瀧野先生とお別れ。瀧野先生、本当にありがとうございました!
 昼食をとり、再度ポイント変更後、魚とり。しかし、みんな疲れているせいか、みんなあまり魚をとりませんでした。高一の部長とM氏、中三のM氏は泳いでいた。ちなみに、中三のA氏はシュノーケルを使っていた。用意周到である。
 ここで獲れたのは、ルリヨシノボリが多かったと思う。ごめんなさい。眠かったので記憶が…。
 その後、DIVEした人のためのお風呂TIME!!そして高田グリーンランドを出発。新宮駅から特急列車に乗車し、新大阪へ。ちなみに、中三は帰りの電車で全員熟睡。他の学年はトランプ。……俺らどんだけ寝てないねん。そして大阪駅にて解散。
 みなさん、お疲れ様でした!
Nの通信衛星/公開(09.10.25)
TOP生研部室コラム

Copyright(C)2004-2023 NBRC All Rights Reserved.