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略称 | pH ピーエッチ 古くはペーハー | ||||||||||||||||||
標準和名 | 水素イオン濃度指数 | ||||||||||||||||||
標準英名 | potential [power] of Hydrogen | ||||||||||||||||||
定義 |
水溶液の酸性、塩基性(アルカリ性)の度合いを表す指標。 水溶液中の水素イオン H+ の濃度を [H+] (mol/L:モル濃度)として表すと pH は常用対数(10を底にした対数)を用いて以下のように定義されます。 pH = −log10[H+] または [H+] = 10-pH ※ H+ は、ここでは水素原子が電子を失って陽イオン(cation)あるいは陽子(proton)として溶媒中に存在しているものを示しますが、実際にはこの状態で存在しているとは考えられず、水中で一般に水分子と結合して H3O+ の状態で存在します。ですが便宜上これを H+ として考慮します。 水中での水素イオンの主な放出元に水分子があります。水分子はごく一部電離して平衡が成立するので(以下上式)、 その電離定数として水のイオン積 Kw を定めます。(以下下式) H2O ⇔ OH- + H+ (正確には 2H2O ⇔ OH- + H3O+)、 Kw = [H+] × [OH-] (mol/L)2 水のイオン積 Kw は温度に依存して一定値を取り、たとえば約25℃の条件下に於いて(標準大気圧の元で) Kw = 1.0 × 10-14 (mol/L)2 となります。 水に溶けている物質(溶質)のうち、電離して H+(酸性の要因)を出す物質、 OH-(塩基性の要因) を出す物質は、共に様々あります。であれば、これらが水中を自由に存在していれば、その液性を判断することは極めて難しいと言えます。ですが、実際には濃厚ではない溶液において、溶媒であるところの水分子が溶質に比べて極めて多量であり、そして常にその電離平衡が常圧下で温度に依存して一定であるため、水中に存在する H+ 量と OH- 量の総量は最終的に水のイオン積のみに支配されると言えます。それゆえ、 H+ の濃度、もしくは OH- の濃度がわかってしまえば、その液性はすぐに判別することができます。 そして水溶液中の [H+] と [OH-] の濃度比により、[H+] = [OH-] で中性、[H+] > [OH-] で酸性、[H+] < [OH-] で塩基性とそれぞれ定義しました。 したがって上記の内、中性の pH は以下のとおりとなります。 Kw = [H+] × [OH-] 及び [H+] = [OH-] より Kw = [H+]2 [H+] = √Kw ∴中性 pH = −log10[H+] = −1/2 log10(Kw) Kw は温度に依存するため、標準大気圧で中性 pH は以下のように変化します。
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定義 改 |
〜上記が理解できている人のために〜 現在、修正された定義によると、新たにここで水素イオン活量 aH+、活量係数 γ(ガンマ)を用いることで水素イオン指数は以下のようにあらわすことができます。 pH = −log10aH+ = −log10γ[H+] 水素イオン活量 aH+とは、あるモル濃度の H+ のうち、実際に水素イオン濃度指数を求めるに際してそのイオン自身の性質をいかんなく発揮しうる H+ の量を表します。そして全体量に占める、能力をいかんなく発揮するイオンの量の存在比率を、活量係数 γ として定義しています。 ただし、通常の pH 測定においては[H+]は十分に小さいと言えるのでその活量係数 γ≒1 として考えても問題はないです。(河川観測においては気にせずとも大丈夫です) 漠然と溶液が酸性か塩基性かを調べるのであれば、リトマス苔の色素を利用した赤色リトマス紙と青色リトマス紙を使うことによって未知の液体の液性を把握することは可能です。その他のpH指示薬を使うことによってもその指示薬の変色域を超えるpHの変化を追うことはできます。変色域が異なり、違う発色をもつ指示薬を一つの試験紙にしみこませることによって、だいたいのpHをさぐることもできます。が、発色した光線の波長を細かく識別できる能力がないため、これは厳密な測定とは言えません。 ですが、あまり厳密さにこだわりすぎるのも恐ろしいものです。電気化学的に厳密に pH を測定したいとしても実際に求めることができるのは水素イオンの活量となります。実験的には全体のうちどれだけの割合で水素イオンが’本気をだす’かはわかりません。つまり、水素イオン濃度は本当はわからないのです。当然、水のイオン積も意味を持たないことになり……。と、精神衛生上よろしくないかんじになります。 それでも理論的には、濃度の薄い溶液について考えるときは γ≒1 としてよいという伝家の宝刀があるため、水素イオン濃度は求めることができるようになっています。それらの計算式は……複雑すぎて手に負えませんので本稿では割愛させていただきます。 |
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測定法 |
一般的にpHの測定はpH メーターが用いられますが、その仕組みである ガラス電極法について紹介します。 まず、測定したい試液と基準となる基準液を極めて薄いガラス膜によって隔てます。すると両液間に生じているわずかな電位差により起電力が発生しますので、それを二つの電極で測ります。pH が1異なる溶液の起電力には約60(mV)(標準大気圧、25℃で)の差が発生しますので、先ほど測った起電力差から相対的に試液の pH が算出できるというわけです。 ※PHと起電力差の関係はファラデー定数F、気体定数R、絶対温度(ケルビン:℃+273)などから求められるのですが、そういった諸処の処理も含めて pH メーターが行ってくれるので意識する必要はありません。これらの計算もまた 紙とペンでこなすにはいささか面倒ですので、素直にハイテクの恩恵に感謝しましょう。 基準液は基本的には pH=7 の pH 緩衝性をもつ溶液を用います。ここでは試験液と基準液との液間電位差が少なくなるように、 K+ と Cl- の大きさがほぼ等しく溶液中の移動速度がほぼ等しい塩化カリウム溶液が特に使用されます。 ただし、基準液に pH=7 の溶液を使えるのは、試液(ここでは川の水)が強い酸性または塩基性を示す可能性がほとんどないからでもあります。例えば強酸性の温泉が流入している、砕けた石灰岩が露出して塩基よりになっている、など、基準液と大きく離れた pH の試液を計測した場合は、理論値と実測値の差が許容できないレベルで開いてしまう可能性が高くなります。 例に挙げたような目に見えて分かる変化が無くとも、pHは意外と変動します。なので数値に違和感を覚えたら、前項で紹介したようにリトマスなどによる簡単な液性の判定も試してみるべきだ、ということを頭の片隅に残しておいてください。 測定機はとても繊細ですので、使用する前に調律の作業が必要になります。まず機器に使用されている基準液と同じ溶液を電極に触れさせ、その電位差を測ります。同じ pH の溶液同士を比較しているので電位差は0になるはずですが、通常は少しの誤差が生じてしまいます。そこでその誤差も試液の測定時に計算に含めるようにあらかじめ補正しておくのです。我が部では川に出かける前に部室で行っていますが、測定の直前に現地で行うほうがより正確になるでしょう。 |