化学的調査における基本要素 ガイド

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§T 酸素(DO・BOD・COD)

 河川調査の項目には「O」の文字を含む指標がたくさん登場します。これらのOはOxygen、酸素のOなんです。本項では、川の水の状態を測定する指標のうちでも、酸素に関する DO、BOD、CODの3つの指標についてまとめていきたいと思います。

  • DO、BOD、CODの違いについて
  • …長文を読むのが大変だという方はこちらから。
  • 酸素についての諸知識
  • …酸素についての化学的所見。
  • DO
  • …溶存酸素量。水中に溶け込んでいる酸素の量を直接評価します。高ければ高評価。
  • BOD
  • …生物化学的酸素要求量。 水中の酸素変化量を用いて、間接的に有機物量を評価します。低ければ高評価
  • COD
  • …化学的酸素要求量。 水中の酸素変化量を用いて、間接的に還元性物質量を評価します。低ければ高評価。

DO、BOD、CODの違いについて

 まず、名前に酸素の「O」が付いているからといって、水中の酸素の量を測定しているとは限らないことに注意してください。
 水中の酸素量を直接測定しているのはこれらの内でもDO(溶存酸素量)のみです。川で暮らす生物、つまり水中で暮らす生物たちだって呼吸をしています。水中に存在する酸素の量は彼らの生存に直結しますので、河川の状態を測るにあたり酸素はとても大切な意味を持ちます。
 では残るBODとCODにはなぜOの字が含まれているのかといいますと、水中にある有機物の量と還元性物質の量を それぞれを分解する時に必要な酸素の消費量を用いて測定しているからなんです。有機物は動物の糞尿や死体などが分解されたもののことで、微生物や細菌などの栄養源となり水質悪化の要因と考えられています。還元性物質は有機物そのものに加えて、それらが細かく分解された無機塩類を含んだものです。無機塩類とはNH4+、NO2-、PO43-などを含む塩類のことで、植物プランクトンや藻類などの栄養源となり同じく水質悪化の要因と評価されます。

 詳しくはそれぞれの項目で解説しますが、DOは数値が大きければ大きいほど水質が良いとされます。水中の酸素は多ければ多いほど多くの生物が暮らせるからです。(例外もありますので詳しくはDOの項を)
 BODとCODは共に数値が小さければ小さいほど水質が良いと評価されます。理由としては有機物や還元性物質は分解される際に酸素を消費するため水中のDO値を下げてしまうと考えられているからです。DOの低下は水質の悪化を示しますので、その原因物質の量を表しているBODとCODは小さければ小さい方が高評価となるわけです。

 最後に、これらの指標を用いる場合は、選んだ指標によって数値の大小と水質の善し悪しが逆になるところに注意してください。DOは大きい方が、BODとCODは小さい方が、良い水質ということです。
 また還元性物質(有機物+無機物)と有機物では前者の方が水中の総量は大きくなるはずなので、原理的には同じ試料を測った場合 COD > BOD の順で測定値は大きくなります。数値の大小が逆になった場合、どちらかで測定ミスをしている可能性が高いです。(これは河川や湖沼など自然の中にある環境水の場合で、食品系の工場や畜産場などからのタンパク質を非常に多く含む排水の場合は逆に BOD > COD となります。よって河川の水質調査の場合はやはりCODが優越すると考えて問題ないでしょう。)

/* 環境水と排水ってどこが発信? 便利だからあちこちで使ってるけど……法律ででてくるんかね? 誰か調べといてー */

酸素についての諸知識

 酸素は大気中に二番目に多く含まれる気体で、体積で考えて21%、質量で考えて23%も存在しており、まさに無尽蔵にあるといって過言ではありません。好気性生物の呼吸によって消費され、藻類や植物によって光合成で作り出され、生物とは切っても切れない関係にある気体です。
 また、意外と知られていないことですが、生物にとって必須であると同時に、猛毒でもあります。例えば活性酸素は生体構成分子を必要以上に酸化してしまいますし、酸素中毒やガス病などの言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。

 酸素の実験室での製法としてはカタラーゼや二酸化マンガンを触媒として過酸化水素水を分解することで比較的簡単に得られます。工場規模の製法としては水に少量の電解質を加えて電気分解する方法がよく用いられます。

DO 溶存酸素量

略称  DO  ディーオー、ドゥー(Vt)
標準和名  溶存(在)酸素量
標準英名  Dissolved Oxygen
定義  標準和名の通り、水中に溶解している酸素の量をppm、又はmg/lで表します。(現在では後者のmg/lの方が主に使われるようになりつつあります)

 ※ppm(parts per million)はあまり見慣れない単位ですので補足します。parts per millionの言葉の意味通り、100万分の一を表します。 100分の一を表す%(パーセント)の親戚だと思ってください。
求め方は、河川水は1ml=1mgと近似できるので、1L=1kgと考えて、mg/L = mg/kg = 10-3/103 = ppm と考えます。
便宜上 単位と呼んでいますが、正しくは比率を表す補助単位で、正式な国際単位であるm(メートル)やg(グラム)とは少し異なります。

概説  さて河川観測においても、水中にどれだけ酸素が存在するのかは大切な指標たり得ます。そもそも酸素の水に対する溶解度は決して高くなく、標準大気圧(の元での酸素分圧)で25℃で淡水1L中に酸素が7mgも溶ければ飽和(これ以上溶けない状態まで溶けること)してしまいます。同じ条件であれば塩(塩化ナトリウム)は270g、つまり270000mgも溶けることと比較すると、ずいぶんと少なく感じます。ですが水中で生物が生き延びるためにはこの少ない酸素を活用せねばなりません。水中に存在する酸素量は、水生生物にとってまさに死活問題といえるでしょう。

 酸素が溶媒(河川観測の場合は水)に溶解して飽和する量は 気温、水温、大気圧、海水ならば塩分濃度など、外部の環境に大きく影響されますし、そもそも大気中の酸素量もまた変化しています。加えて、水中の酸素は生命活動や無機物の分解によって消費され、逆に植物や細菌の光合成によって供給されるのも忘れてはいけません。溶存酸素量は外部環境と生物の両方から影響を受け、常に変動し続けているのです。

 大気中の酸素量は極めて大きいため、理論上は水中の酸素もまた常に飽和しておりDO値も安定していると考えられます。しかし、気中と水中とのガス交換は水面からしか行われないなどの理由から、実際のDO値はかなり不安定になります。
 水中生物の光合成量が多ければ過飽和状態に、水中の酸化物、亜硫酸イオンなどの還元性物質や水中生物の呼吸の過多によって酸素が消費されれば貧酸素状態に、とDO値は激しく上下しています。これが光合成による安定した酸素供給が見込めない夜間や日陰であればさらに極端になることもあります

※飽和を気中から水中へ溶けこむ酸素の量(速度)と、水中から気中へとでていく酸素の量(速度)が等しくなることと捉えれば、一般に酸素の溶解度は低いため、酸素の飽和量もまた小さくなるとイメージしやすいです。

 溶存酸素量は昼夜だけでなく季節にも影響を受けます。酸素は水温が低い方が溶けやすいので、DO値は水温が下がる冬期に増加し、水温が上がる夏期に低下します。さらに生物の活動も水温が上がれば上がるほど活発になりますので、冬期よりも夏期の方が酸素の消費量も増えてDO値はさらに悪化するケースが多いです。よって、魚の大量死など酸素の欠乏による異変は夏に発生しやすいといえます。

※気体の溶解度は溶媒の温度が下がれば下がるほど増加します。温度変化によって分子が持つ運動エネルギーが増減することが主な理由なのですが、細かく見ると例外も多いです。ですがここでは簡略化して、気体は冷たい液体にたくさん溶けて、温かい液体にはあまり溶けない。ぐらいの理解で大丈夫です。

 溶存酸素は地形の影響も大きく受けます。例えば河川が作り出す地形に注目すれば、上流域の渓流部では水流が速く傾斜も急なために水面が波打ちます。水面が凪いでいる場合と比べれば表面積が増しますので酸素の溶解度も増加し、溶存酸素量も増えていきます。したがって中流域、下流域と、流速が遅く傾斜が緩やかになっていけば逆に溶存酸素は減ることになります。
 また、河口に近づくほど保持する水量が増えて溶媒が増加する(分母が大きくなる)のに加え、含まれる有機物量も増えて分解に必要な酸素が増加するため、水中の酸素はますます低くなってしまいます。

 ここからは国土交通省が提案している「今後の河川水質評価の指標について(案)」より具体的な数値を引用して、その意味を解説していきたいと思います。

 この水質評価指標ではDO値を指標として河川を4つの段階に分けて評価しています。それぞれ、きれいな水(生物の生息・生育・繁殖環境として非常に良好):DO値 7mg/L以上、少し汚い水(生物の 〃 として良好):DO値 5mg/L以上、きたない水(生物の 〃 として良好ではない):DO値 3mg/L以上 、大変汚い水(生物が生息・生育・繁殖しにくい):DO値 3mg/L未満、の4つです。

A 生物の生息・生育・繁殖環境として非常に良好T きれいな水 DO値 7mg/L以上
B 生物の    〃     として良好U 少し汚い水 DO値 5mg/L以上
C 生物の    〃     として良好ではないV きたない水 DO値 3mg/L以上
D 生物が生息・生育・繁殖しにくいW 大変汚い水 DO値 3mg/L未満

 ではそれぞれの基準値となっているDO値 の意味について解釈していきます。
 最も良い評価である「きれいな水」とみなされるにはDO値 7mg/Lが必要とあります。これはアユなど水質の悪化に敏感な魚類が生息するのに必要な酸素量です。水生昆虫であればヒラタカゲロウ類、カワゲラ類、ナガレトビケラ類など貧腐水性のも十分に生存できます。山の渓流部など水面が波打ち酸素が良く溶け込み、汚水などの流入がほぼない水域を想定していると思われます。
次に優れた評価である「少し汚い水」と判定されるにはDO値 5mg/Lが求められます。これは一般的な魚類が生息するのに十分な酸素量でしょう。加えて、汚水の流入や有機物の沈殿などによるある程度の酸素消費も加味していると考えられます。(詳しくは次項以降に譲りますが、無機物や有機物の分解には酸素が必要です) 水生昆虫ならばシマトビケラ類や底性のカゲロウ類(注:シロイロカゲロウ類のこと?)が生息できます。
 続く評価の「きたない水」の基準はDO値 3mg/Lとなっていますが、これは低酸素環境に強い魚類(コイ、フナなど)が生存するために必要な最低限の酸素が3mg/Lほどだからでしょう。有機物の分解による酸素の消費を差し引くと、このあたりの評価が魚が住めるギリギリの水質と評価されていると分かります。水生昆虫ではミズカマキリなど呼吸管により大気中から酸素を取り込める種なら生存可能です
 最後の「大変汚い水」は先ほどのDO値 3mg/L以下と定義されています。繰り返しになりますが、水質悪化に強いごく一部の魚類が暮らせるかどうかあたりの数値です。セスジユスリカやチョウバエといった低酸素に強い水生昆虫ならかろうじて生活できます。付け加えると、好気性微生物が活発に活動して有機物を分解するためにはDO値 2mg/L以上の酸素が水中に必要です。よって、それ以下の酸素しかない場合は硫化水素やメチルメルカプタン類など悪臭物質が発生し、いわゆるドブの匂いがすることになります……

 さきの指標では魚類を主な基準として考えていきましたが、これは魚類は漁業利用など社会生活に組み込まれた存在だからです。ですので、例えば「大変汚い水」と評価されているからといって、生き物がまったく住めないという意味ではないということに注意するべきです。

 好気性の微生物の活動には酸素が2mg/L以上必要と書きましたが、そもそも生存にまったく酸素が必要ない生物だって存在するのです。嫌気性細菌が有名どころで、破傷風菌は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。 呼吸とはエネルギーを確保することと言い換えられます。ですから呼吸の他にエネルギー源があるのならば息などしなくとも生物は生きられるのです。
 ちなみに嫌気性の細菌が有機物を分解してエネルギーを作り出した後に残されるのが硫化水素などの悪臭物質です。つまりあの臭いは、彼らが生きている証でもあったわけですね。厳しい環境なら競争相手も少なくてすみますし、彼らのように低酸素環境に特化することは立派な戦略です。これもある種の多様性ですね。

 細菌のような肉眼で見えない生物の話をしてもイメージがわきにくいかもしれませんね。目に見える大きさで低酸素を好むものは、淡水であればイトミミズやユスリカの幼虫、海水であればゴカイなどがあります。共通項にお気づきでしょうか。そう、みな赤いのです。そしてその赤さが彼らのタフネスの秘密でもあります。
 酸素が通常よりも少ない環境で生きるためには身体に少しでも多くの酸素を蓄えなければなりません。それを可能とするのが、彼らすべてが持っている赤色のヘモグロビン様の色素(Feを含有)です。人間の血も赤いですよね?あの赤と役割は同じで、酸素を効率的に保持しています。だから魚や他の生物が生きられないような場所でも彼らは生きていられるわけです。それが人工の用水路であれ 自然の湖沼であれ、”赤い”生き物が目立つならその水域の酸素は不足気味かもしれませんね。

出典:国土交通省「今後の河川水質評価の指標について(案)」

測定法  溶存酸素の測定にはDOメーターという機器が用いられますが、その仕組みである隔膜電極法を主に紹介します。

 DOメーターは各社さまざまなモデルがでておりますが、そのほとんどが本体とケーブルでつながったプローブ部分(試液につっこむところ)でできています。”隔膜”電極法とあるその隔膜こそ、そのプローブの部分の先端なわけです。非常に繊細なので、絶対に硬いものに当てるな!!しまうときは面倒がらず必ずカバーをつけろ!!と指導されているかと思います。この隔膜は酸素を透過するものが選ばれており、ここから取り込んだ酸素の量を本体部分がハイテクを駆使して”計算”して数値化してくれるわけですね。

 ”測定”ではなく”計算”としたのは理由があります。それは水中の酸素量を直接測定するのがとても難しいからです。(技術的ハードルではなく、機器が大型化したり高価になったりするからだそうな) ですので、少し手順を加え、やっかいな水中の酸素量測定を電気化学的な計測(こちらは小型装置で簡単にできる)に置き換えてしまい、測定した電流を改めて酸素量に再変換することで、間接的に酸素量を求める というのが隔膜電極法の骨子になります。あえて手順を増やすことで作業を簡単にするための工夫という意味では、高校化学でも習うヨウ素滴定(ちょっと大変になるけど分かりやすくなる)などと同じ方向性を持つわけです。

 上記の一工夫について説明するには、プローブの中身の解説から入った方が分かりやすいので、この説明でも一手順を間に加えることにしましょう。

 プローブの中身は大まかに分けて電極と隔膜そして電解液に分かれます。電極部分は二つあり、それぞれ異なる金属で作られています。そしてその間に電解液(ただし酸性溶液以外)が満たされており密封されています。この際、よりイオン化傾向の小さい金属(つまりはイオン化し辛く安定な金属)を用いた電極側には外部と酸素分子のやりとりができる隔膜を触れさせておきます。この隔膜部分が試液に触れる部分になるわけですね。

 さてここからは工夫の説明に入ります。今のプローブの状態を未完成の回路と考えれば、酸素透過性隔膜に近い電極(カソード:陰極・正極、還元反応がおこる電極)が電子を受取る(奪う)物質に触れさえすれば、すぐにでも回路は完成する状態であるわけです。

 そしてここまでの”お膳立て”の上で、隔膜を透過してきた酸素(酸化数0)がカソードで次の反応によりOH-(酸化数−2)に還元されます。

 O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-

 また、アノード側では次の反応(電極の金属が酸化される)が起きて電子を放出します。

 4Ag + 4Cl- → 4AgCl + 4e- (ポーラログラフ式)
 2Pb + 4OH- → 2Pb(OH)2 + 4e- (ガルバニ電池式)

 これらの化学反応により回路が完成すれば、隔膜から遠い側の電極(アノード:陽極・負極、酸化反応がおこる電極)から発生した電子が次々とカソードに向かい反応は進んでいきます。その電子の流れをメーター内部の電流計で測定すればいいわけです。

 発生した電流は、当然 隔膜を透過した酸素量に支配されます。そして酸素が隔膜を透過しようとする圧力は、水中の溶存酸素量に比例する……これらの関係を逆算することによって、測定した電流から水中の酸素量が推定できます。これが隔膜電極法と呼ばれる手法です。

 最後にいくらか補足を。上の化学式に、ポーラログラフ式、ガルバニ電池式、という説明にない言葉があったと思いますが、これらは機器側で準備する回路が、それだけで完結(つまりは電池)するか、外部から電圧をかける(つまり電気分解)必要があるかで、異なるからです。前者の電池型回路を用いるのがポーラログラフ式、後者の電気分解型の回路を用いるのがガルバニ電池式、と隔膜電極法はさらに2種類に分けられるということですね。

 ちなみに他の手法として、ウィンクラー・アジ化ナトリウム変法(マンガン塩で酸素を固定して、ヨウ素とチオ硫酸塩で逆滴定する。実験的室な手法で高校生がやらされるならこれ。大学受験でも頻出なので一度は経験するが吉)、ミラー変法(教材カタログでキットが一番高かったから即座に不採用になった。生研ではそれ以降縁がない)、そして、酸素消光(光励起した分子が基底状態へ戻る時に発する蛍光の強度を酸素分子が弱める仕組み)を利用した測定法(近年小型化されて隔膜電極法のシェアを奪いつつあるらしい)などがあります。

/* ウィンクラー法はいずれ実験記事を載せたいところ。でも今回はここまでで許して。 */

BOD 生物化学的酸素要求量

略称  BOD  ビーオーディー
標準和名  生物化学的酸素要求量
標準英名  Biochemical Oxygen Demand
定義  水質の汚染度を示す代表的な指標で、水中の微生物や細菌が水中の有機物を分解するときに消費する酸素の量を表します。水中の酸素量の変化を測定することによって、間接的に有機物量が評価できるわけですね。単位はppm、又はmg/lを用います。(現在では後者のmg/lの方が主に使われるようになりつつあります)

 通常、20℃、5日間の条件下で試水を好気条件下かつ暗所下(光合成による酸素量増加の防止)におき、消費されたDOで示します。有機物以外にも溶存酸素を減らす要因として還元性無機物質なども考えられますが、この指標で 主に水中の微生物が5日間で分解できる有機物の量を測定しています。
その測定方法から五日間BODまたはBOD5と呼ぶこともあります。

 ※ppm(parts per million)はあまり見慣れない単位ですので補足します。parts per millionの言葉の意味通り、100万分の一を表します。 100分の一を表す%(パーセント)の親戚だと思ってください。
求め方は、河川水は1ml=1mgと近似できるので、1L=1kgと考えて、mg/L = mg/kg = 10-3/103 = ppm と考えます。
便宜上 単位と呼んでいますが、正しくは比率を表す補助単位で、正式な国際単位であるm(メートル)やg(グラム)とは少し異なります。

概説  例えば水中に消費可能な有機物(当然消費されない有機物も多く存在します)が十分にある場合、それらをエネルギー源とする微生物が多量に発生します。微生物は水中の酸素を多量に消費するのに加えて、水を濁らせ水中に届く光量を減らし藻類の光合成を阻害します。水面を埋め尽くすことで酸素交換が妨げられる影響も無視できません。これらの要因により溶存酸素量は極めて低くなりますが、そういう場合BODの値は逆に大きくなります。

 溶存酸素量が少ないとき、魚などの偏性好気性生物(代謝が呼吸のみに依存している、つまり酸素がなければエネルギーを作り出せない)は生命活動に支障をきたします。が、水中の一部の通性嫌気性生物(代謝が呼吸のみに依存しておらず、酸素が無くともエネルギーを生み出せる)は有機物を分解して、生命エネルギーをとりだすことができます。それらがさらに分解を進行させれば(結果として毒性物質が生じるときを腐敗といいます)、硫化水素などが発生し(SとOはともに14族原子ですが、H2Oに比べて、H2Sは好気性生物にとって有毒です)、いわゆるどぶの臭いがするようになります。

 BODの上昇(DOの低下)は一般的に水質の汚濁や汚染が進んでいることを意味します。それは本来安定して飽和しているはずの溶存酸素量が低下している原因が、水中の有機物である(正確にはそれらを分解できる微生物によって酸素が余計に消費されている)と考えられるからです。よって水中の有機物量は水質汚染を測る指標として機能しています。
 しかし微生物が分解する有機物量を直接計測するのは難しい。そこで彼らが有機物の分解に用いた酸素の量を計測することで、消費された有機物の量を推定するわけです。

 ですがこれはいくらかの問題を含んでいます。まず、試料中の有機物の種類によって必要な酸素の量も変化してしまうことです。もちろん有機物を分解する微生物や細菌の種類によっても要求される酸素量が変化します。実際に測定できるのは酸素の変化だけなのですから、有機物の減少量と酸素の減少量の相関関係が一定になってくれなければ推定の精度が大きく失われてしまうのです。また、そもそも試液中に酸素が無い場合は有機物が嫌気性生物の活動によって分解されてしまいます。この場合は精度どころかそもそも数値を出すことすらできません。
 試料に含まれる微生物や有機物の種類による差分はあらかじめ分かっていれば補正できます。しかし、溶存酸素の不足だけはどうしようもありません。なのでBODの測定時にはあらかじめ適度な酸素が試料に含まれているかどうかを確認しておくべきでしょう。水中のDO値が低い場合は、代替の指標として有機物が酸化される時に必要な酸化剤の量を酸素に換算するCOD(化学的酸素要求量)が用いられることが多いです。 CODについての詳細は次項に譲ります。
 最後にBOD最大の弱点について触れておかねばなりません。それは時間が必要ということです。後述するCODの化学的な酸化とは違い、生物による有機物分解には時間が必要です。河川では5日間、湖沼や海域の場合は数十日とも言われています。(実はこれらの日数に理由はなく、世界中で5日待っているから日本でもあわせているというのが実情です。ちなみにイギリスのテムズ川が河口に達するまでの時間から来ているそうです) 試料を腐らせずに長時間保存するためにも設備が必要ですし、即座に測定が可能なCODと比べれば余計な手間になってしまいます。

 実際の水質調査において問題となるのは、水域中での水の攪拌や対流が起こりにくい湖沼などの止水域や、酸素がとけ込む水面から水底までの距離が大きくなる海洋です。これらはつねに水が流れているため酸素が潤沢に溶け込んでいる河川などの流水域に比べ、試料の酸素濃度にばらつきが起きやすくなります。ですので前者のように酸素が不足しがちな海域や湖沼域では溶存酸素に左右されないCODを、後者のように十分な酸素があるだろう河川域ではBODが用いられるのが一般的です。

 BODは水質汚濁に係る環境基準項目となっており、生活環境の保全に係る項目として、河川における基準が、類型(自然環境の保全を要する水域に適用される最も厳しいAA類型から大都市の河口付近のE類型まで)ごとに定められています。
AA類型が1mg/l以下、A類型が2mg/l以下、B類型が3mg/l以下、C類型が5mg/l以下、D類型が8mg/l以下、E類型が10mg/l以下です。

 BODは工場の排水基準値(海域及び湖沼以外への排出水)として160mg/L以下と定められています。家庭や工場からの排水量にそのBOD濃度をかけたものをBOD負荷量と呼び、当然これは少なければ少ないほど好ましいです。

測定法  生研では共立理化学研究所のBOD測定セット WA-BOD-2 を用いて測定しています。公定規格としての手順は非常に複雑ですので、本項では測定セットで推奨されている手順に補足を加える形で紹介します。

 まず試料を2つに分け、栓のできる容器に空気が混ざらないように封じて、確実に判別できるようにしておきます。このうち1つの溶存酸素をすぐに計測し、その値をDO(初日)としておきます。残りの1つはこのまま20度前後の暗所に保存しておき、5日後にあらためて溶存酸素を測定し、その値をDO(5日後)とします。そしてDO(5日後)からDO(初日)を差し引いた数値が五日間BODとなります。これが二十日間BODを求めるのであれば、取り置いた2つ目の試料の溶存酸素測定を20日後にずらします。

 DO(5日後) − DO(初日) = BOD5(五日間BOD)
 DO(20日後) − DO(初日) = BOD20(二十日間BOD)

 試料を保存するときの注意としては、まず温度を一定に保つことです。BODは試液中の微生物や細菌の活動によって変動した酸素量を測定しますので、高温になって彼らが死滅したり、逆に低温すぎて活動が鈍化した場合、有機物の分解が十分に進まない可能性があります。夏場や冬場は室内で保存するだけでは不十分で、恒温槽(温度を一定に保てる装置)などを使用するのが好ましいです。
 また、試料は暗所に置き、太陽光を遮断します。保存期間中に試液に含まれていた藻類などの光合成によって酸素量が増えてしまっては、有機物の分解に使われた酸素量が小さく見積もられてしまうからです。直射日光を受けると保存容器内の温度が上昇してしまうリスクも無視できません。

 河川調査で取り扱うのは水中に十分な微生物や細菌が含まれた環境水です。しかし、例えば工場からの排水など 水中に十分な分解者が含まれていないであろう非自然な排水をBODで評価したい場合、試料中に有機物を分解するのに十分な分解者が含まれていない可能性があります。そこで、土壌や河川などから採取しておいた分解者を添加してやると、分解が安定し酸素消費も定量的になります。この作業を植種と呼ぶこともあるようです。(植種を行った場合は導入した抽出液の割合や含まれていた酸素量に応じた補正を行います)
 環境水を調査する場合でも、微量の無機栄養塩(窒素やリンなど)をあらかじめ加えておけば、分解者が活発化して酸素消費が安定します。これらの添加を行う場合は、当然ながら2つに分けた試料の両方に加えなければいけません。(対照実験というやつです)

 最後に、BODは生物の代謝を用いた指標ですので、彼らの実際の分解速度も意識しておかねばなりません。もしも試料中の有機物量があまりにも多すぎる場合、5日間では分解が終わらず消費された酸素量が小さく算出されてしまう恐れがあるからです。例えば下水や排水など高濃度の有機物が含まれることが想像される場合は、あらかじめ試料を薄めておいて、希釈溶液で測定した酸素消費量から希釈前の酸素要求量を逆算するなど工夫が必要になります。しかしこれが意外と難しく、希釈した試料中の溶存酸素量が低下しすぎないように管理するなどコツがいるそうです。

COD 化学的酸素要求量

略称  COD  シーオーディー
標準和名  生物化学的酸素要求量
標準英名  Chemical Oxygen Demand
定義  水中の有機物(またはほとんどの還元性物質)を強い酸化剤で酸化するときに、消費した酸化剤の量を酸素当量に換算したものを、ppm、又は mg/lを用いて表します。(現在では後者のmg/lの方が主に使われるようになりつつあります)

 酸素は電気陰性度が大きいので強い酸化剤ですが、酸素分子O2は安定な分子で酸化能はほとんどありません。
 しかし、以下の式を立てることはできます。

 O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O (酸性下)
 O2 + 2H2O + 4e- → 4OH- (中性・塩基性下)

 O2に酸化能があるとみなせば、1molのO2は4molの電子を奪います。測定に使う酸化剤も、1molあたりいくらかの電子を奪うので、それをO2当量に換算すればいいわけです。
たとえば、過マンガン酸カリウムだと下式のようになります

 MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O (酸性下)
 MnO4- + 2H2O + 3e- → MnO2 + 4OH- (中性・塩基性下)

 ※ppm(parts per million)はあまり見慣れない単位ですので補足します。parts per millionの言葉の意味通り、100万分の一を表します。 100分の一を表す%(パーセント)の親戚だと思ってください。
求め方は、河川水は1ml=1mgと近似できるので、1L=1kgと考えて、mg/L = mg/kg = 10-3/103 = ppm と考えます。
便宜上 単位と呼んでいますが、正しくは比率を表す補助単位で、正式な国際単位であるm(メートル)やg(グラム)とは少し異なります。

概説  CODは、一定の強力な酸化剤で試水を処理したおりに、水中のほぼすべての還元性物質がどのくらい酸化されるのかを示したものです。一定のとしたのは、使用した酸化剤が異なる場合に 測定値が僅かに変化してしまうからです。その結果として同じCODでありながら互換性が失われてしまって比較ができない事例が散見されます。ですが大まかな性質は一貫しており、総じてこの値が高くなれば その水中に有機物などが多く含まれている、つまり 汚染されていると評価できます。

COD 1ppm以下きれいな渓流 ヤマメなどが住む
COD 2〜10ppm河川の下流の水
COD 3ppm以下サケ、アユがすめる
COD 5ppm以下比較的汚染に強いフナなどが住む
COD 10ppm以上下水 汚水

 CODの利点として、BODに比べて測定が短時間で終了する点と、試料の溶存酸素量や微生物の種類に左右されない点が上げられます。欠点としては、ある程度以上に強力な酸化剤が必要となるため、水質汚濁に深い関係のない還元性物質も巻き込み酸化してしまう点があります。よってCOD測定値は、実際の水質汚濁の原因物質のみを酸化した場合と比べると高くなることを意識せねばなりません。

 CODは排水規準にも用いられ、一般に海域と湖沼の環境基準に用いられています。それは、河川では水は基本的に流れていくからです。河川中を流れる間は限られており、有機物の分解に用いられる時間はさらに短い。ですので5日間程度のBODでも問題なく有機物の分解程度を推定できます。
 ですが、海域と湖沼では、有機物は長い間同じ場所に存在する可能性が高くなります。場合によってはまったくの止水域すら生まれえます。それれらBODで測るとなれば、5日ではまったく足りず、数十日ものBODを調べなければなりません。ですがこれは試液の長期間の保管に始まりたいへん煩雑です。よって、測定に長い時間を要しないCODが指標として用いられるわけです。

 湖沼などの止水域でCODが重宝される理由はもう一つあります。貧酸素塊の存在です。分かりやすくいうなら、酸素が無い水の塊です。これらが湖沼には無数に存在します。例えば有機物が多すぎて好気性の微生物がその分解に酸素を使い果たしてしまった場合などですね。水の流れや対流があればすぐに攪拌されてしまうのですが、地形的な条件によってはそれが起こらない場合もあり、そうなりますと酸素を全く含まない場所と酸素がある場所がモザイクのように絡み合うことになります。BODは有機物の量を消費された酸素の量で推定する指標ですから、そもそも酸素がない場合はその正確さを失ってしまいます。(BOD調査の前後に試液のDOを確認するように指導されるのはこのため) よって水中の酸素量に左右されずに有機物量を評価できるCODの方が重宝されるわけですね。

 最後に1つ、とある学芸員さんから聞いた話を。
 CODとBODを使い分ける線引きについてはなかなか曖昧で、生研でもよく分からんから とりあえず両方調べておこう!程度の認識だったりします。ですが環境基本法などの行政基準ではわりと使い分けられていたりして、部員を悩ませていました。そこで以前学芸員さんにたずねてみたところ、以下のような話を聞いたのです。
 水質評価の基準としてCODもBODもかなり古くから使われている指標で、現在のように便利な機器もなく逆滴定(ウィンクラー法、DOの項を参照)でデータを取っていたのだそうです。当然かかる手間や時間も今の比ではなく、複数の指標で評価する余裕も当然ない。ですから当時もっとも適切だろうと考えられていた 河川水はBODで、海水や湖沼水はCODで、という歴史的な評価(そもそもCODやBODはそれらの水質を評価するために開発されたのだから)に重きが置かれてデータが蓄積されてきた。そして時代が進み技術も進化した現在でも、その伝統が引き継がれているだけなのではないかと。
 これには実利的な意味も大きく、BODとCODは完全に互換ができないため、多くの観測データの蓄積がある方の評価を重点的に行うことは過去との比較が簡単にできるというメリットがあるのだそうです。

 昨今ではTOC (Total Organic Carbon)やTOD (Total Oxygen Demand) といったより洗練された手法も開発されており、いずれ計測機器も小型化されていくはずです。CODやBODとの互換性の確認は国内ですでに行われ始めており、しばらくは古典的な指標と同時に計測してデータを積み重ねていく形になるでしょう。
 互換には水系レベルでのばらつきがあるようで、全国一律どころか地方で統一することすら まだまだ難しいようです。ですが、いずれは解決されるでしょう。過去に積み重ねられた先人達の記録が後世に引き継ぐための手伝いが我々にもできれば嬉しく思います。

 厚生労働省様が公開している「有機物の指標について(TOCの基準値案について)」を一部参考にさせていただきました。

測定法  生研では測定にパックテスト(共立理化学研究所の商標、以下は略します)を用いています。試薬には 常温アルカリ性KMnO4酸化法が用いられており、塩基性条件下で有機物を酸化させることからCODOHと呼ばれています。

 ※酸性下では水中の有機物のみならず、(特に海水中)に存在する塩化物イオンまで 過マンガン酸カリウムによって酸化されてしまいます。ですので、塩化物イオンによる測定値のずれを防ぐために、あらかじめ硝酸銀水溶液などで塩化銀として沈殿させるなど余計な下準備が必要となってしまいます。
 ところが アルカリ性下では塩化物イオンはそもそも酸化されません。パックテストを用いるにしろ、実験室的に行うにしろ、こちらの方が効率的というわけです。

 過マンガン酸カリウム水溶液は濃い赤紫色をしており、酸化還元の滴定によく用いられます(反応後にイオン化してほぼ無色になるため、酸化還元反応の終了が分かりやすいため)ことがあります。本来、CODの測定も含めて滴定をするとなると、煩雑で細やかな操作をしなければなりませんが、このパックテストを使えば、不慣れな生物屋でも楽にCODの計測ができるのでとても重宝しています。

 前項で問題点としてあげましたが、CODは有機物の酸化に用いる酸化剤の強弱で数値が変化してしまいます。水中の有機物含有量が多ければ多いほど数値も大きくなるという大まかな傾向こそ一致しますが、用いられている酸化剤が異なればほぼ別の指標と扱われます。例えば日本では過マンガン酸カリウム(KMnO4)を用いたCODMnが一般的なのですが、米国や欧州ではより酸化力の強い二クロム酸カリウム(KCr27)を用いたCODCrが普及しています。よって国際的なレベルでの比較で相関関係が損なわれるという問題が知られています。

 学生が行うレベルの調査では気にする必要はないと思われますが、最初に紹介したパックテストの常温アルカリ性KMnO4酸化法は共立理化学研究所 独自の改良が加えてあるため、一般的なCODOHとは厳密には異なります。記録をつける際にはパックテストの利用を明記した方がいいでしょう。
 パックテストは河川調査で想定される程度の有希物量ならCODMnとも相関関係を維持できますが、工場排水レベルとなると誤差が大きくなる可能性がありますので注意してください。
詳細は「共立理化学研究所様のWEBサイト」でご確認ください。

/* JISの公定規格のこともふれといたけど、あんまり気にしすぎるとキリないよってのも書いときたい。 がんばって夏休みにパックテストで調べてきた子供が、そんなん意味無いって大人にめったうちにされたら心折れるって。 */
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