コカゲロウの増水時における行動


増水時に飛び石にぶつかって出来た緩い流れにコカゲロウがいることが観察されました。もともとコカゲロウがたくさんいた場所はとても急な流れになっており、そこからは姿が消えておりその近くの流れのゆるいところにいました。これらのコカゲロウは一見避難しているかに思えます。では、実際のところどうなのでしょうか?実際に観察できればいいのですが増水時は水が濁り、流れがとても速く危険なため一部の場所でしか観察できないので、まわりの状況などから考えたいと思います。


↑ 増水時に観察したポイント




増水によって急にできたところ(写真上)に似たような場所にはいないことより流されてきたコカゲロウがそこにつかまってたまっているのではないということです。ですから、元からその周辺にいたものが移動したと考えられます。そのコカゲロウがもともといたと思われる場所との密度がだいたい同じであることからも同じこといえます。どのように移動したのかは増水の仕方から次のような仮説が立てられます。


←石につかまっているコカゲロウ











まず、普段は下図(川の流れに垂直な断面図)のような場所にコカゲロウがいることが観察されています。



雨が降って増水してくると流れの速い部分が広がっていきます。コカゲロウは流されないために流れの緩い場所へと移動していきます。



さらに増水し、コカゲロウが流れの速い部分によって追いやられていき観察された状態になると考えられます。



◇コカゲロウの流下実験
上の仮設にいたるまでの増水によって急にできたところに似たような場所にはいないことのことによる「流されてきたコカゲロウがそこにつかまってたまっているのではない」というところが確かではないので、コカゲロウが流されているときに本当にどこかにつかまることが出来るのかを確認するための実験です。

実験@
川の中にある一つのはまり石(人工)の上のコカゲロウを網に集めて(50匹ほど)、石の上の残りのコカゲロウを手でなぞるように流します(このとき別の網でコカゲロウを集めコカゲロウが石の上からいなくなったかを確認する)。そのあと、その石より少し上流部から集めたコカゲロウを流し、三十秒待ってから石の上のコカゲロウをもう一度集めて数を数えます。

・結果
石@(比較的流れがゆるい) 15匹
石A(比較的流れが速い)  6匹
石B(流れが速い)     0匹
*ある程度距離を取って、だいたい同じ面積の石を用いました。

実験A
実験@の石Bについて実験後(石からコカゲロウを除去後)30分おいてから石B上のコカゲロウの数を数える。

・結果
8匹


○実験から
実験@よりコカゲロウは流れがゆるければつかまる事ができ、普段の流れなら途中で止まることが出来る事が分かります。しかし、流れが急なところではつかまれないので、増水時の急な流れ(実験の急な流れよりもはるかに急)ではほとんどの個体が途中でつかまる事ができず流されっぱなしになっている事が予想されます。また、実験Aよりコカゲロウの少ない石Bにまわりからコカゲロウが移動してきていると考えられます。 以上より「流されてきたコカゲロウがそこにつかまってたまっているのではない」というのは正しく、コカゲロウを川底にそって移動するということも確かめられました。 これらのことから立てた仮説は正しいと考えられます。








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