組織培養実験

                           H1-1 永田 拳吾

組織培養とは
植物体の一部分から完全な植物体を育てる方法のことです。ニンジンを例に挙げて説明すると、ニンジンの形成層の部分ひとかけらから一本の完全なニンジンができるということです。組織培養で生育された植物体は全て元となった植物と同じ形質を持っているため優良種や、朝鮮人参など採取が困難なものの大量生産などに利用されています。今回は市販のニンジンを使用します(後の後悔の原因)。

実験の目的
培地のインドール酢酸とカイネチンの濃度比を変え、どの部位が分化するかを調べる。

実験に使用するもの
ニンジン、コルクボーラー、包丁、ピンセット、メス、コニカルビーカー、1000mlビーカー、メスシリンダー、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、MS-G培地、pHメーター、電子天秤、ヒーター付マグネチックスターラー、双眼顕微鏡クリーンベンチ、恒温槽、蒸気滅菌器、乾熱滅菌器、アルミホイル、サランラップ、濾紙、IAA(インドール酢酸)、カイネチン、寒天、ショ糖(スクロース)、メス、エタノール、シャーレ、輪ゴム、ゴム手袋

使用器具は蒸気滅菌器に入れて120℃30分間かける。殺菌した器具は50%エタノールて保存する。また植物ホルモンは0.1mol/lの水酸化カリウム水溶液に溶かして使用する事とする。

実験schedule
1日目:放課後に器具を蒸気滅菌器にかけておく。
2日目:朝早く部室にきて器具を取り出しエタノールに入れる。培地の溶液を作り分注し、蒸気滅菌器に入れる。放課後、培地にニンジンを植える。
培地の製造
@純水500mlをメスシリンダーで測りとり1000mlビーカーに入れ、MS-G培地13.5gと寒天5gとショ糖15gを加え、マグネチックスターラーで加熱しながらかき混ぜる。
A植物ホルモンを入れる。
B塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液を使ってpH5.6に調整する。
Cコニカルビーカーに約50mlずつ入れ、アルミホイルで蓋をする。
D蒸気滅菌器で120℃20分間かけて滅菌したのち、自然冷却する。
以上を踏まえて、実験を行う。

実験の手順
@中性洗剤でよく洗った人参を包丁でだいたい3等分に切り70%エタノールに2,3分浸す。 (以下の作業はクリーンベンチ内で行う。)
A切ったもののうち真ん中のものの成層の部分(ニンジンを切ったとき、断面にある円形の白い筋の円周上)を打ち抜き、メスで5mmほどの厚さに切る。切ったものは濾紙を敷いたシャーレに置く。
Bピンセットでニンジンを培地に置く。
Cアルミニウムで蓋をして、輪ゴムで口をしばる。
D恒温槽内部に25℃で安置する。


↑ 実験中の写真。右下のは熱しすぎて焦げた培地



これを培地のIAAとカイネチンの濃度比を変えた次の培地について行う。

培地A:IAA1.5mg/l、カイネチン1mg/l   75mg 50mg
培地B:IAA1.5mg/l、カイネチン0.1mg/l 75mg 5mg
培地C:IAA1.5mg/l、カイネチン0.01mg/l  75mg 0.5mg

〜実験の考察〜

1回目の考察
培地Aについて行なった。最初の実験であったので操作はかなりテキトーであった。植物ホルモンは水に溶かしたので完全に溶けず、寒天は2005年賞味期限のものを使った。ニンジンは10個中2個のみしか殺菌せず、しかもその殺菌は100%エタノールで行なった。培地は100%エタノールで殺菌したもののみカビなかった。しかし、当然ながら細胞も破壊されていたのでカルスの成長は進まなかった。そう、この時は決してニンジンを疑ったりはしなかった。


↑恒温槽もとい孵卵機

↑恒温槽に放り込まれた培地たち

2回目の考察
培地Aについて行なった。今回は殺菌をしっかりした。そしてし過ぎた。次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)で殺菌したのだ。約30%の。後にインターネットで調べたところ通常1%ほどで使うようです。結果は言うまでもなく全滅。ちなみに培地個数は13個でこの日は金曜日でした。


↑クリーンベンチ


↑生前の培地



↑カビた培地たち↑
(右側はタマホコリカビという珍しいカビ)



3回目の考察
培地Aについて行なった。今回は寒天が実験用の1級粉末寒天を使った。殺菌は15%エタノールにのみ使用。その後3%エタノールで保存した。培地は5個。結果は1つカルスになりかけたが途中で止まった。途中で止まる?カビも生えてないのに。この時あたりからニンジンの鮮度を疑い始める。


余ったニンジンは、くつくつ煮込んで、いただきます!



4回目の考察
培地Bについて行なった。今回から植物ホルモンは0.1mol/lの水酸化カリウムに溶かして使用した。また寒天やショ糖の量を変えた。それぞれ5秒から10秒、殺菌した?してなかった!仕方ないので、手でエタノールをすり込んだ。培地は、エタノール殺菌なし×3、70%×2、50%×2、25%×2、15%×2、10%×1の計12個。結果は全滅。


←カビが侵食してもはや原型を留めていない


5回目の考察
培地Cについて行なった。それぞれ5秒から10秒ピンセットでつまんでエタノールにつけた。培地はエタノール殺菌なし×4、、50%×2、25%×2、15%×2の計10個。このうちエタノール殺菌なしのうち2個がカルスになった。かなり分化が進んだが、またもや途中で成長が止まる。どうやら全てはニンジンのせいのようだ、いや、そうに違いない。そうでなくてはならないのだ!


↑再分化が進んだカルス↑




まとめ
そもそも今回実験で使用したニンジンは普通の市販のものであった。そのため細胞が痛んでいたのが今回の実験の失敗の最大の原因だ。こちらに落ち度は全くないと言っても過言ではない、はず。まあ、操作中に細菌などが混入したのも事実ではあるが。ひとまず組織培養の実験はこれでひとまず締めくくりとしますが、新鮮なニンジンを安定して入手できるようになった時にはまた実験を再開しようと考えています。







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