生研京都支部

−とある生物屋のつぶやき−

何か書かないと気が狂ってしまいそうなので、近況をポツポツと報告。
水生昆虫がらみが多くなるかと。



福知山探索日記 その7 と あとがき

今回は予告通り写真だけです。
えっ?手抜きじゃないよ?


ホントだよ?



↑タニガワカゲロウの仲間


↑フサオナシカワゲラの仲間


↑ブユの仲間


↑アメンボの仲間


↑ユスリカの仲間


↑シマトビケラの仲間


↑シマトビケラの仲間


↑コカゲロウの仲間

↑プラナリア

↑イトミミズ

↑サワガニ


以上っ。

 最後になりましたが、ここまで付き合ってくれた貴方に最大の感謝を。
今後も灘校生物研究部をご贔屓に〜



福知山探索日記 その6


農道を帰りながら適当なところでムシを探す。ムシ達が好みそうないい雰囲気なのだが、ほとんど確認できない。やはり泥の影響なのだろうか?っていうか歩きにくい。泥ひどすぎ。水はにごるし足は埋まるはでもう散々だ。しかし稀に流れが早く泥の少ないところがあり、そこには結構いろいろいることがわかった。それらの地点には藻類もそこそこ生えており、普通の川って感じを受けた。

なんだかんだで小1時間も歩くと、出発地点に戻ってきてしまった。体感距離はすさまじかったが、実際にはそれほど遠いわけではないようだ。


↑山の入り口。ここから先は登山用の装備が必要だろう。


↑この支流は泥が少ない。たくさんのムシが確認できた。

余談になるが、帰る途中に毛虫の行列に遭遇した。スゴイ数で足の踏み場がなかった。行きしに通ったときには居なかったのに、一体何があったのだろう?ゴム手袋でちょっと突くと、コロリと丸くなる。結構かわいい奴だ。


↑刺されると痛そう……何の幼虫かは不明。



続いて戦果の紹介を。山中ではタニガワカゲロウが、農地に下ってからはシマトビケラとコカゲロウが比較的多く見られた。偶然とても小さなアメンボが網に入ったのだが、手持ちの資料が少ないため後日写真を見ても同定できなかった。残念無念。日本産の小型アメンボ類とは明らかに形が違うので、おそらくは若齢の幼生なのだろう。カゲロウやトビケラ達も初めて見る種類が非常に多く大満足。サワガニやプラナリアも見つけたので、やはり水質自体は悪くないらしい。カワニナも発見した。夏にはこの水路をホタルが飛び交うのかもしれない。山の奥の池での探検も合わせて、本当に楽しみだ。期待で胸を膨らませながら、次の機会を待つとしよう。

戦果一覧 山間部   タニガワカゲロウの仲間 *** フサオナシカワゲラの仲間 ** ブユの仲間 ** アメンボの仲間(若齢個体) * コカゲロウの仲間 * ユスリカの仲間 * 農地部 シマトビケラの仲間 *** コカゲロウの仲間 ** アミメカワゲラの仲間 ** 携巣型トビケラの巣 * 固着型トビケラの巣 * コカゲロウの仲間(亜成虫) * サワガニ * プラナリア * カワニナ * イトミミズ * ***:いっぱい **:まあそこそこ *:ちょっぴり




↑金魚ネット以外は全部現地の百均で購入。


↑ちなみにこの”金魚ネットM”は120円なり。


↑特大ハケ、今日は割と活躍。
引っ掛かってるムシはタニガワカゲロウ。




分量の都合から、捕まえたムシの写真は次回に



福知山探索日記 その5


4月30日

翌日目が覚めると、既にお昼過ぎであった。どうやら昨夜の無茶がたたったらしい。一応父の手伝いに来たはずなのだが、午前中寝っぱなし。流石に気まずかったので、午後は精力的に働いた。当社比3倍ぐらい。獅子奮迅の働き?のおかげで4時にはすべての仕事が片付いた。私はやればデキる子なのだ。こうなればヤルことは一つ……懲りずに川に突撃しましたとさ。

現在は宅地として開発されているがこの辺りは昔農地だったらしく、あちこちに使われなくなった水路が残されたままになっている。昨夜の小川も水路が長年放置されて、帰化したものなのだろう。今日は昨日とは逆に、まだ”生きている”水路をターゲットにすることにした。宅地のはずれまで進めば、農地がまだ広がっているのだ。とりあえず、上流を目指して水路をたどることにした。


↑宿泊地から徒歩1分。現役の水路だ。



テクテク、ひたすら歩く。しかしどれだけ進んでも一面の田んぼ。さっきから景色が全く変わらない。農道が地の果てまで続いていそうだ。何のために歩いているのかを忘れそうになった頃、第一村人と遭遇。天の助けだ。やはり日ごろの行いが良いからに違いない。早速この辺りについて聞き込み調査だ。オッチャン曰く、”この水路はひと山越えたところにある大きな池から水を引いてくるために造られた”とのこと。さらにその池にはミズカマキリやタイコウチなどが生息しているらしい。すばらしい。しかしココからはかなりの距離があるから、今からでは着く頃には日が暮れてしまうだろうとも言われた。このまま歩き続ければ、楽園への扉が……。とはいえ、昨日とは違い夜間活動用の装備は全く持っていない。この状態で夜の山に挑むのは断念せざるを得なかった。無念。親切なオッチャンに丁重に礼を述べた後、時計と相談。次回のために行けるとこまでは行ってみることに。果たしてどうなることやら……


↑景色は最高。気分は最低。





結局、山の入り口で引き返すことになった。来る途中で廃屋群を通りぬけたのだが、昔はこの辺にも人が住んでいたらしい。ココまで歩いてみて分ったのだが、どうやら泥っぽいのはここら全体の水路の特徴らしい。山に入ってからは一見普通の小川なのだが、川の中に足を入れてみると長靴がズブズブと沈んでいく。水源の池が原因なのだろうか?それともこの山を通り抜けるうちに泥を運んでしまっているのだろうか?今回の探索では結局分らずじまいに終わりそうだ。


↑物置は形をとどめている。中には農具が放置されていた。



福知山探索日記 その4


ライトトラップとムシ達を、ただボヘぇと眺めているだけではアレなので、スペアの懐中電灯を片手に川に突入することに※4。しかし結構、段差が急なのな。油断すると滑り落ちそうになる。何とか足場を確保しつつ、無事入水。今度は川底が滑ること、滑ること。手で触れてみると何かにゅるにゅるしてる〜。キモっ。水カビか?しかしライトで照らしつつ見てみると、タダの藻。ならこのヌメヌメは何やねん?とよくよく川底を見てみると、大量のシルト(細かい泥のこと)が!石の表面に生えた藻類にまとわりついたシルトが犯人だったのだ。水をくみ取って見てみると、確かに若干濁っている。でも上澄みはそこそこきれいだ。上流で工事でもやってるのか?水質を調べようにも器具も薬剤も何にもない。ああっ、パックテスト※5が恋しい。



※4 何度もくり返しますが、夜の川は非常に危険です。滑り落ちて骨折、毒蛇にかまれる、迷う、など夜の川には危険がいっぱいであります。くれぐれもマネをしないように。

※5 プラスチック製の小型チューブのなかに試薬が入っていおり、水中の汚れの成分が一発で分る。@チューブに穴を開けるA調べたい水を入れる。Bよく振る。たったコレだけでめんどくさい水質調査を肩代わりしてくれる、ステキグッズ。ご想像のとおり、非常に高い。やっぱり世の中甘くない。





↑スゴイ泥。明日これ以上の地獄を知ることになるとは、この時は全く……



水中でムシを探すも、またもや邪魔をしたのはシルト。金魚ネットの網目が詰まるは、トレイに上げたら上げたで中の水が濁るはで超厄介。ホントに一体何なんだコイツは?その上深さを見誤って長靴に浸水すること2度、ウェーダー気分で川の中に座ろうとしてお尻を濡らしそうになること多数。腰が非常に痛い。とても痛い。もう散々。個人で通販しようかな、ウェーダー。欲しいよウェーダー。ちなみに、秘密兵器の特大ハケはあんまり使えない。大きければいいってモンでもないらしい。普通の筆にしとけば良かった。


愚痴はこのぐらいにして戦果を。とにかく多いのはヒラタドロムシのお仲間。現場では暗くてよく見えなかったが、写真で確認したところどうやら複数種のドロムシが共存しているらしい。タニガワカゲロウや携巣型のトビケラも割と見つかった。それぞれシロタニガワカゲロウ、ニンギョウトビケラ、グマガトビケラだろう。逆にコカゲロウなどの遊泳型幼虫はほとんど見られなかった。その上まだ若齢であったため小さすぎて、撮影も出来なかった。残念無念。あまり見たことのない形の幼虫であったので、また機会があれば確認したいところ。最後に今回の採集で最も心ときめいたムシである、トビイロカゲロウを紹介しておこう。住吉川で今年春に発見されたと連絡はあったものの、その姿は写真や本でしか見たことが無かったのさ。やったね。まだ見ぬムシを求める私にとっては、今回の旅を通して最高の戦果。もう腰の痛みも吹き飛ぶね。お持ち帰り決定〜。



戦果一覧

ヒラタドロムシ類 ***
タニガワカゲロウ類 **
ニンギョウトビケラ類 **
グマガトビケラ類 **
トビイロカゲロウ類 *
サナエトンボ類 *
ナガレアブ類 *
コカゲロウ類 *
アミメカゲロウ類 *

***:いっぱい **:まあそこそこ *:ちょっぴり


↑タニガワカゲロウの仲間


↑ヒラタドロムシの仲間


↑ニンギョウトビケラの仲間


↑グマガトビケラの仲間


↑コカゲロウの仲間(腹部がちぎれている)


↑サナエトンボの仲間


↑ナガレアブの仲間


↑トビイロカゲロウの仲間

福知山探索日記 その3




4月29日

いよいよ福知山行き当日。”朝6時起き”という獄門を乗り越えて何とか車に乗り込み、装備品と機材の最終チェック。それにしても眠い。昨日の晩は装備の点検であまり寝られなかったのだ。うつらうつらと現世と常世の間をさまよっている間に福知山に到着したらしい。3時間もたっていない。結構近いのね。荷物の運び込みやら片付けやらの手伝いを片付けた後、さあ由良川にっ!……………………って遠い。遠いよ由良川。間借りしている家から由良川へはかなりの距離があったのだ。地図でみたら結構近かったんだけどな。久しぶりに採集ができるという興奮から、こんな基本的な確認をうっかり忘れてしまうとは………装備うんぬん以前の問題じゃん。

しかし、だがしかし!このままでは終われるわけがない!
というワケで移動中に偶然見かけた、名も知らぬ小川に突撃することにした。


↑明るくなってから撮影。小川ではなく、農業用の水路だった。



現在の時刻は午後6時過ぎ、周囲は既に薄暗い。普通なら採集は明日に延期して、体を休めるのが吉なのだが……”川に行きてぇなあ〜”体の疼きが止まらない。”今から行っちゃおうか?”ふと思ってしまった。流石にそれは不味い。とっても不味い。”知らない川に夜に入るのは危ないぞ”と理性は叫ぶ。当たり前である。夜の山は人の領域ではないのだから。全く舗装されていない道に、崩れかけの崖、さらには活性化した動物たちなど、普通に生きていてはまずお目にかかることのない危険がはびこる世界である。しかし一度浮かんでしまった欲望はそう簡単には消えてはくれない。その上誰かがコッソリとささやくのだ。”これだけの自然の中ならライトトラップ法※2が試せるぞ”と。1時間と少し後、欲望と好奇心に負けた私はライト片手に無事入山を果たしたのだった※3。



※2 ほとんどのムシの成虫が持っている”光に集まる”という性質を利用した採集方法。夜中にムシが隠れていそうなところを灯りで照らし、集まってきた周囲のムシを一網打尽にするという悪魔のような手法。とにかく効率がいいので、1山丸ごとといった広い範囲を対象とした調査ではよく利用される。

※3 本来なら絶対選択してはいけない行為。土地勘があるならまだしも、視界も確保出来ない状況で未知の山に入り込むなんて狂気の沙汰としか思えない。自分でやっておいてアレだが、今は反省している。




入山とはいっても登山道ではなく、脇を併走している農道を使う。しばらく歩くと、さわさわと水の流れる音が耳に入ってきた。もうすぐ小川に到着だ。と、ここでライトトラップを作るのに丁度良さそうな木を発見。腰ほどの高さで、丈夫そうな枝が2又している。これはココに仕掛けろ、という世界の意志に違いないと感じ、この地点を今夜の拠点とすることに。朝から日よけに使っていた白いタオルを枝に巻き付け、懐中電灯で照らす。すると、すぐにムシ達が集まってきた。やったぜ。こんやの俺は最高や!しかし、待てど暮らせど大物は来ない。集まったムシのほとんどが双翅目だ。要するにカやらハエの仲間ってこと。1時間と少しねばってはみたものの、結局他にかかったのは1p程のトビケラ成虫のみという有様(たぶん”ニンギョウトビケラ”だと思う)。ああ、この前みたNHKの某教育番組によるとカブトムシとかも来てウハウハ……になるはずだったのに。現実はこんなもんかね。あまり関係ないが実験中にイタチを見かけた。光に興味を持って、よって来たらしい。そもそもムシじゃないしーーーー、一応今回一番の大物?


↑イタチ?カメラの操作ミスでフラッシュが……左下のアレが目。多分。



福知山探索日記 その2

まず困ったのは道具や薬品が無いことだ。卒業の際に部から借りていた機材を返却した上、自前の道具すら部室に預けたままになっているので、タモ網すら手元にはない。いきなり大ピンチ。出発は明後日に迫っているぞ。しかも前日まで予備校に缶詰。買い出しに行く時間はない……というわけで帰り道にあるホームセンターで適当に見繕うことに。足りないものは気付いた時に現地で調達することに。準備した機材は次の通り。

長靴……ホームセンターで購入。足首から30pを完全防水!ウェーダーが恋しい。
網……いつもの金魚ネット。使うたびに破ける消耗品でもある。大中それぞれ2個ずつ購入。
特大ハケ……スポイトの代わり。いろいろなサイズがあるにはあったのだが、大は小をかねると信じて購入。
トレイ……バットの代わり。私は前からプラスチックのトレイを使っていたので違和感はない。
小物入れ……捕獲した虫を持ち帰る入れ物。水が漏れない物が好ましいのだが……
ふた付きビン……あると何かと便利。
ゴム手袋……住吉川では使ったことは無いのだが、念のために。
懐中電灯……常備していた懐中電灯を福知山に持って行ってしまったのでついでに。



↑現地の百円均一で調達。何でも売ってて非常に便利



↑懐中電灯はそのまま常備されることに



後は行きしに部室によって固定用のエタノールを持てば……ってエタノールがない!考えてみれば、当たり前。エタノールは劇物。部にいた頃は薬剤管理に声をかけるだけで借りることができたが、コンビニで簡単に手に入る物ではないのだ※1。仕方ないので母に、薬局で消毒用の70%エタノールを購入しておいてもらうことにした。

さあ、これで準備は万全……本当か?


※1 正確にはエタノールは”劇物”ではないが、表現の都合から文中で使用した。”劇物”とは”毒物及び劇物取締法”で指定された薬品のことを差し、”水酸化ナトリウム”や”硫酸”などがそれにあたる。またその取扱いは法律によって厳しく規制されており、高校生は責任者の監視の下でしか扱うことはできない。



福知山探索日記 その1

父が仕事の都合で福知山行くことになったので、荷物運びのためについて行くことになった。もちろんお目当ては 近くにある”由良川”での採集だ。浪人中の身ながら、本能的にレポートをまとめてしまったので、部のホームペ ージを借りて掲載させてもらえることになった。掲載許可をくれた部長と更新担当にこの場を借りて感謝を。拙い 内容ではありますが、楽しんでいただけば幸いです。



↑福知山での一枚




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